視障協だより 第50号(R05.01)
「視障協だより」 令和5年1月発行
「この会報は共同募金の配分金を受けて発行しております。」
※この会報は音声版を文字起こししたものです。
目次
1 会長声の挨拶 …… 片岡 美佐子(かたおか みさこ)
2 声の日視連(にちしれん)中央情勢報告 …… 社会福祉法人 日本視覚障害者団体連合会長 竹下 義樹(たけした よしき)
3 視覚障害者協会の動き …… 会長 片岡 美佐子
4 第64回岡山県視覚障害者福祉大会の報告 …… 副会長 川口 常雄(かわぐち つねお)
5 第70回日本盲人会連合 中国ブロック盲人福祉大会(広島市大会)報告 …… 岡山県視覚障害者センター所長 川田 忠茂(かわだ ただしげ)
6 第70回日本盲人会連合中国ブロック盲人福祉大会(広島市)に参加して …… 青年部部長 掛谷 和夫(かけや かずお)
7 第70回中国ブロック大会女性部会に参加して …… 女性部部長 鈴木 鈴子(すずき れいこ)
8 第68回全国視覚障害女性研修大会 北海道・東北ブロック(福島大会)に参加して …… 女性部部長 鈴木 鈴子
9 第68回全国視覚障害青年研修大会(福岡県大会)の報告と感想 …… 青年部長 掛谷 和夫(かけや かずお)
10 文芸作品コンクール結果報告 …… 担当理事 竹内 昌彦(たけうち まさひこ)
11 さわやかクラブ交流会報告 …… 部長 篠原 春樹(しのはら はるき)
12 令和4年度「点字に親しむ会」報告 …… 担当理事 大賀 淳(おおが じゅん)・鈴木 鈴子(すずき れいこ)
13 グランドソフトボール部本年の活動報告 …… グランドソフトボール部部長 戸根 順也(とね じゅんや)
14 フロアバレーボール部報告 …… フロアバレーボール部部長 上山 照正(うえやま てるまさ)
15 中国ブロック三療研修会の報告 …… 三療部部長 長谷川 律夫(はせがわ のりお)
16 岡山マラソンケアステーションに参加して …… 理事 福原 隆行(ふくはら たかゆき)
17 今年もタンデムサイクリングに参加しました …… 竹野 磨智子(たけの まちこ)
18 栄えある受賞
19 編集後記 …… 岡山県視覚障害者センター所長 川田 忠茂(かわだ ただしげ)
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1 会長声の挨拶 …… 片岡 美佐子(かたおか みさこ)
視障協だよりをお聴きの皆様
明けましておめでとうございます
コロナ禍も4年めになりましたが、皆様におかれましては、令和5年の新春をお健やかにお迎えのこととお慶び申し上げます。旧年中は、公私共に大変お世話になりありがとうございました。
そして、会員の皆さまには、平素より、本協会の諸活動に対して、ご理解と、ご協力をいただいておりますことに心よりお礼申し上げます。
さて、新年早々ではありますが、悲しいお知らせをしなければなりません。
本会の評議員、理事、会長、監事等の役職を歴任されました、井上孝昭様が、昨年11月26日に享年84歳で逝去されました。長年にわたるご貢献に対して感謝の気持ちです。心よりご冥福をお祈りいたします。ご葬儀は、家族葬で行われました。
私は、急なことだったのでびっくりして、胸のどきどきがしばらく止まりませんでした。
コロナ禍は、まだまだ収まってはいません。昨年も、日視連の理事会、評議員会その他委員会、全国大会、全女大会、全青大会等も、オンラインを中心に開催されました。
そこで、今年もこの号で、日視連竹下義樹会長の声で中央情勢報告を録音したものを、皆様にお届します。ごゆっくりお聴きください。
本会でも昨年同様、理事会、評議員会、福祉大会は感染防止対策をして対面で開催しました。
11月の福祉大会で、懐かしい方々と一年ぶりにお会いできたことが、とても嬉しく、和やかなひと時を皆様と共有することができました。
昨年5月には、「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法」が制定されました。この法律は、障害者が情報の入手や、やりとりをしやすくする取り組みを、社会で進めるための
ルールといった意味です。弱視者(ロービジョン)の方々の見やすい環境が整備されることや、使いやすい機器の開発、必要に応じて点字での情報提供が十分なされることが望まれます。一方、スマートフォン等による迅速な情報取得のためには、公的・民間での文章に、ユニボイスコード等の普及が必須と考えます。
次に、令和5年度の、第76回全国視覚障害者福祉大会は、奈良県で開催されます。コロナ対策を十分にして、令和5年5月21日(日曜日)・22日(月曜日)の2日間で、参加者の規模を縮小してオンラインを中心に開催されるようです。多くの皆様は、YouTubeをご視聴いただくようになると思います。従って今回も、旅行を計画しておりません。
また、今年は、第71回中国ブロック視覚障害者福祉大会の開催が岡山県の当番となっています。令和5年9月9日(土曜日)と10日(日曜日)にきらめきプラザで開催しますので、皆様のご参加をよろしくお願いします。
それから今年度は、新しい障害者支援施設岡星寮が、2月末に岡山市中区土田に完成の予定です。利用者の皆様にとっては、新しい寮での生活を楽しみにしておられることと思います。
年頭にあたり皆様の益々のご繁栄とご健康をお祈りいたしますとともに、皆様方からのお力添えをいただきながら、視覚障害者の福祉向上を目指して努力する所存ですので、より一層の温かいご支援ご協力をよろしくお願い申し上げます。
これから、寒さが厳しくなってきます。インフルエンザやコロナ感染防止対策をしっかり行って、皆様くれぐれもお身体を大切にしてお元気でお過ごしくださいますように。
また、皆様とお会いできる日を楽しみにしています。
2 声の日視連中央情勢報告 …… 社会福祉法人 日本視覚障害者団体連合会長 竹下 義樹(たけした よしき)
1.はじめに
全国の会員の皆さんこんにちは。今回は中央の動き、あるいは日視連のこの間の動きを皆さんに報告します。
2.第75回全国視覚障害者福祉大会
まず、全国大会の報告です。第75回の全国大会を5月31日と6月1日に名古屋市で開催しました。名古屋市の田中伸明会長はじめ、皆さんにはお世話になりました。
この大会において新型コロナウイルスのために全国から皆さんに集まっていただくことはできませんでしたが、青年協と女性協の皆さんによるシンポジウムを開催しました。これは青年及び女性の皆さんが将来をどう展望し、あるいは自分たちの現状を踏まえた問題点を将来に向かってどう解決するのかといったシンポジウムを企画したものです。非常に重要な指摘もありましたので、このシンポジウムで指摘された内容を、今後運動に活かす、あるいは社会にどう訴えていくかということに繋げていければと思います。
今年の全国大会では全国団体長会議を会場参加とオンライン参加のいわゆるハイブリッド方式で開催したことも特徴です。
毎年、大会で全国の皆さんの要望を議論する分科会は、今年は全国から集まっていただくわけにはいかなかったので、4月に3日間にわたって分科会を開催し、全国から寄せられた陳情項目についての意見交換を行い、その内容を深めることができました。
そのように今年の全国大会は少し工夫をしながら、コロナ禍の下での大会の持ち方として、名古屋方式という形のものを実施できたと思います。
3.陳情
次に、その大会を受けて、日視連としての各省庁に対する陳情活動ですが、これは例年より一か月ほど遅くなり、8月に各省庁との調整を行った上で、陳情を行いました。陳情活動は対面、オンラインで実施する所もあれば、郵送で陳情書を送って終わりという所もあり、時代の流れと言うべきか、コロナの影響も受けながら陳情活動も形を変えてきているように思います。
毎年のこの陳情活動によって地道ではありますけれど、一つ一つ我々の問題解決に結びつけていきたいと思っています。
4.障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律(障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法)
3番目は「障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律」についてです。この法律が今年の5月に成立しました。
一言にして言えば、障害者が情報を利用したり、あるいは情報を得たり、意思疎通を図る上でのハンディをどう克服するのか、それを行政はどういう形で受け止めるのか、どういう理念を打ち立てて今後の国の政策に反映していくのかということが書き込まれた法律ができました。非常に重要な法律です。
この法律によって一つ一つの制度が変わったわけではありませんが、ここに書かれている内容、例えば、私たち視覚障害者でいえば障害の特性に応じた情報の媒体、点字、音声、拡大文字といったものが他の健常者と同時期に自分たちが選んだ方法、望んだ方法で提供されるということが法律に書き込まれています。また、民間事業者に対して、物を開発したり、情報提供したりする場合に障害者団体との協議の場を持つことがこの法律の中で謳われています。
今後、情報に関する様々な場面での方針・理念、あるいはものの考え方というものが、この法律を基礎としながら進んでいくことになります。したがって、この理念に基づいて、個々の制度、個々の法律の改正が今後の大きな課題になってきます。
この法律の10条には、法律の理念を実現するために、各省庁、あるいは自治体が、そのための措置を講じたり、予算を確保したりしなさい、ということも書かれています。このことを皆さんぜひ念頭に置いていただいて、今後、事あるごとにこの法律を意識した活動をやっていきたいと思っています。
5.障害者権利条約
次に大きな動きとしては、障害者権利条約に関する動きです。今年の8月22日、23日に、日本政府が国連の障害者権利委員会に提出していた政府レポートというものに対する、審査・審議が行われました。日本の実情をどう分析し、どういう問題がそこにあるのかということを国連の場で議論しました。
この2日間にわたる議論を経て、9月9日に障害者権利委員会から日本政府に対する総括所見という見解が示されました。この総括所見というのは、日本の実情をどう分析したかということであったり、日本の政府に対してこういうことを改善しなさいという勧告であったり、さらに強い形で日本は速やかにこの制度を改善するよう要請するという言い回しであったり、これらを全部含む内容が総括所見と呼ばれるものです。
これは、日本政府のレポート、それに対して日本障害フォーラム、日弁連といった民間団体から国連の権利委員会に提出されたパラレルレポートも審査の対象としながら、日本の国情に対する審議が行われたわけであります。この内容を一つ一つは紹介できませんが、いくつか我々に関係するものを紹介したいと思います。
一つ目は、移動の支援について。日本の国の制度は制限的だから、もっと制限的でない、自由に使える移動支援、移動保障というものを実現しなさいということが指摘されています。
二つ目、教育の場面では、盲学校教育とかろう学校といった分離教育から、統合教育にどんどん進めていきなさいということが要請されています。
三つ目は、精神障害者の強制入院。これは医療保護入院という、本人の同意なしに入院させられるという制度が、日本の法律で定められていますが、そうした精神障害者に対する精神科病院への強制入院はよくない、これを直ちにやめなさいということも指摘されています。
四つ目は、情報の場面でも、もっと障害の特性に応じた情報が十分に提供されるようにしなさいということも、当然のことながら指摘されています。
これらの総括所見の多くの項目は、直接、視覚障害者には触れていない場面が多いですが、そのことを視覚障害者に置き換えた場合に、我々はどういう制度の改善を求めていくのかということが重要になってくると思っています。
例えば、行政の情報提供という項目がここでも指摘されていますが、そういう場面では先ほど申し上げた情報コミュニケーション法にも指摘されていることと合わせて、選挙公報における点字化の問題をさらに法的義務化にするにはどうしたらいいか、全ての視覚障害者に点字版、音声版、拡大文字版が届くようにするにはどうしたらいいかということも、これから議論されることになると思います。
すなわち、今後、この総括所見を視覚障害者の制度にさらに当てはめた勉強や議論をしながら、運動していくことになります。国に対して要望する一つの羅針盤にもなり得るのが総括所見です。皆さんにも、この総括所見について、ぜひ注目していただきたいと思います。私としては、日視連もこの総括所見を日視連の立場から理解するための勉強会を行って、それを皆さんにお届けすることもやっていきたいと思っています。
6.障害者総合支援法と障害者雇用促進法の改正
それから、今開かれている臨時国会で、我々に直接関係する法律が提案されています。障害者総合支援法の改正と障害者雇用促進法の改正が臨時国会で審議されています。
障害者総合支援法の内容も13項目ほどにわたる改正点があります。これも今回、全部報告するわけにはいきませんが、いくつかを皆さんにお知らせしたいと思います。
一つは、グループホームが少し形を変えてくるだろうと思います。これまでのグループホームは、いったんグループホームに入ると、ずっとそこで生活するというものが想定されていましたが、これからは最後まで住み続ける終の棲家ということでのグループホームという位置づけと同時に、一定期間の生活と訓練を経て、地域にまた戻っていくという形でのグループホームの利用が生まれてきます。また、グループホームを利用した人たちに対してグループホームから出た後も相談を行っていく、相談に応じて支援をしていくという仕組みができてくることになると思います。
次に、就労支援のところで、これまでは就労継続支援A型・B型の事業所、それから就労移行支援事業所というものがありましたが、さらに就労選択支援事業というものが加わります。これは、障害者が就職する場合に、その人の残存能力、労働能力、健康状態、仕事に対する希望、それらを総合的に判断するためのアセスメント。要するに、審査をしましょう、みんなで検討会を持ちましょうということです。そうしたアセスメントを経て、就労継続支援A型事業所かB型事業所か、就労移行支援事業所か一般企業かと進路先を考えていく制度が始まります。
さらには、今後、意思疎通支援事業の中にICTをどれだけ持ち込んで、それを活用した形での意思疎通支援を広げていくかということも検討されることになるようであります。
その他にも、たくさんの改正点がありますが、私たち視覚障害者に直結してくる問題としては、このグループホーム、就労支援、意思疎通支援のところが重要かと思います。
それから、障害者雇用促進法の改正も予定されています。こちらも、視覚障害者に特化した部分での改正というものがあったわけではありません。しかし、今後、視覚障害者にも関係してくる部分がたくさんあります。
例えば、雇用主は、障害者の働く場の環境をどう改善していくかということを、「労働の質の向上」あるいは「障害者の雇用の管理」という名のもとに責任をもって改善策を考えるという項目が入ったり、あるいは、職場での障害者の働きやすさ、例えば、高齢化してきた障害者の職場での働きやすさを維持するための補助金・助成金というものが設けられたりとか、そういう形で障害者の一般企業での働きやすさというものをより前進させるための、今後の制度づくりが進むということが考えられています。
法律の改正そのものではありませんが、除外率制度の見直しも進んでいきます。除外率制度では法定雇用率が義務づけられていない事業所がこれまでありました。義務づけられていないというよりも緩和されているという方が正しいでしょうか。医療機関、警察、自衛隊、輸送機関とか、こういうところは障害者の雇用が緩和されていました。それを制度としてはなくそうと決めたにもかかわらず、なかなか進んでいませんでした。これからは、段階的に除外率制度をやめて、障害者の雇用を全ての企業が例外なく進めていくという流れが始まろうとしています。
こういう形での法律改正や制度改善が動きつつあることも、ぜひ知っておいてください。
7.障害者差別解消法
次に、令和3年5月に法律が改正された障害者差別解消法についてです。障害者差別解消法が去年改正されて一番大きな改正点としては、民間事業者に対する合理的配慮の提供義務が努力義務から法的義務に格上げされました。それ以外にも、相談体制の強化として国と都道府県と市町村の役割やその連携ということも含まれていますが、特に重要なのは、民間事業者の合理的配慮提供の法的義務化です。
この障害者差別解消法の改正を受けて、それを実施するための障害者差別解消基本計画というものがあります。法律をさらに具体化して、それを実践するための中身が書かれているものを基本方針といいます。これも当然、法律の改正に基づいて、改正することが必要です。
この議論が、一年ほどかけて内閣府の障害者政策委員会で行われてきました。その議論がようやく終わって、12月中には内閣総理大臣に提出されて、閣議決定がされると思います。その基本方針の改定作業が終わりますと、今度は各省庁が対応指針・対応要領の改定作業に入ります。
この対応要領と対応指針とは何かといいますと、対応要領は、各省庁が守るべき、実践すべき、障害者の差別解消のための行動規範となるものです。対応指針は、各省庁が所管する民間事業者、民間企業に実施させるための障害者差別解消・合理的配慮実施のための行動規範となるものです。これらの改定作業が来年の3月までに行われるだろうと思います。
そうした作業の全てが終わると、来年の4月から6月ぐらいには改正された障害者差別解消法がいよいよ施行段階に入っていくということになります。これが、障害者差別解消法の問題です。
今述べてきたような動きが、この半年ないしは十か月の間に、大きく動いた部分として報告いたしました。
8.同行援護
さて、今度は分野別の報告に入りたいと思います。これは正に、視覚障害者に直接関係がある、視覚障害者に特化した部分での動きです。
まずは、同行援護事業の動きです。同行援護事業は、ガイドヘルパー(同行援護従業者)の養成が重要です。これまで同行援護従業者養成研修は、20時間の基本的な研修(一般課程)を修了することで、従業者資格要件を満たしました。さらにステップアップするために、12時間の応用編の研修(応用課程)を受ける人もいましたが、今後、これを再編成して28時間の研修(一般課程)を全て修了した人にガイドヘルパーとして働いてもらうようになることが決まりました(応用課程は6時間)。
これは、例えばこれまでの一般課程では、電車やタクシー、バスの乗り降りの場面が項目に入っていなかったのですが、こういうものも取り入れるなどして、今の社会にふさわしい、そして我々の安心・安全が十分に確保されるようガイドヘルパーさんの資質を高めていくということで、グレードアップに繋げるために研修カリキュラムの内容を変更するというものです。
その28時間での基本編が決まりましたので、それに向けてテキストの改編作業が始まりました。早ければ来年には新しい制度でのガイドヘルパー養成が始まります。これによって今後、ガイドヘルパーの研修が十分に行われるということで、イコール、ガイドヘルパーさんの報酬にもそれをどう反映させていくかに繋げていくことが必要であるし、大事になってきます。その報酬の改定は再来年に予定されていますが、その際にはこの新しいカリキュラムになったガイドヘルパーさんの報酬は当然引き上げるべきだというところに結びつけて運動していくことになると思っています。
9.代筆・代読
二番目は、代筆・代読に関する動きです。これは二つの面での動きがあります。一つは、国の動きとして障害者総合支援法の見直しの検討会の中で、意思疎通支援事業の一つである代筆・代読が全国のどこでもサービスが受けられるようにする仕組みづくりが必要だという議論がされて、そのことが方向性として報告書にまとめられました。したがって、その報告書に基づいた制度づくりが始まります。
内部的には日視連において厚生労働省から研究費を頂いて、この代筆・代読では、どのような支援員を養成することが必要か、支援員の能力としてどういうものが備わっていなければならないか。さらには、その事業を実施する場合の制度として、どういう仕組みが必要かということまでも、この調査研究の結果として国に提案することを念頭に置いた作業が進められています。
これは平成30年と令和元年にも行いましたが、今度は、その3度目の調査研究の総決算として、来年の3月までには代筆・代読を全国一律の制度として展開できるように、国に対して提案したいと思っています。これが代筆・代読の動きです。
10.移動のバリアフリー
次は、外出における交通面での動きについて報告します。
まずは、一つ目の朗報、利便性について。我々が電車で障害者割引を受けようと思うと、窓口で手帳を出して割引の乗車券等を買ったり、子供用の乗車券を買って手帳を見せたり、それから改札を通過できるというのがごく一般的な障害者割引ですが、これをもっと便利なものにしてほしいと願ってきました。
今時は、全ての電車において交通ICカードというものがあって、それを改札にタッチするだけで、改札を通過できるというのが全国で一般的になってきています。それを我々が利用することはなかなかできませんでした。
私の住んでいる関西では、JRを除く私鉄・電車・バス会社が全部入っているグループを「スルッとKANSAI」という名前で呼んでいて、そのグループに入っているところはICカードを使って割引料金で電車やバスの乗り降りができています。これを全国に広げてくださいということを、国土交通省にお願いしてきました。その結果、来年の3月からは関東地区で実現することになりました。しかも今度はJR東日本も含めた関東地区の鉄道事業者・バス・電車全てにおいて、この交通ICカードによる割引料金での利用ができるようになります。
ただし、交通ICカードが関東地区で実現したことは非常に朗報ですが、そのことによって少し問題も起こってきています。それは、北陸地方のように、西日本と東日本とが重なる地域とか、あるいは東海と東日本のJRが重なるところについては混乱が起こってきているとも聞いています。これらの問題も含めて、今後どう解決するかということを皆で考えていきたいと思っています。
日視連としては、是非ともこの関東地区での交通ICカードの実現を足がかりまたは追い風としながら、全国で交通ICカードが我々にも提供されて、割引料金で付き添いとともに利用できるようになることを国に強く求めていきたいと思っています。
二つ目の朗報は、有料道路、高速道路などにおいては、これまで事前に福祉事務所に出向いて登録をして、カードを貰って、それでようやく決められた車だけが、有料道路、高速道路を割引料金で利用できました。これをもっと便利に、もっと気軽に、もっと自動車も制限なく利用できるようにしてほしいという声が全国で強くあがっていたのですが、これがいよいよ実現する方向が示されました。
来年の10月頃にまでずれ込むのではないかとみておりますが、障害者手帳を提示するだけで、割引料金で有料道路、高速道路が利用できるようになるということです。ただ、その結果として、ETCが利用できなくて、人のいるゲートを通らなければならないということは若干不便かもしれません。
事前の登録がいらない。どの自動車であろうとも利用できる。例えば、障害者がたくさん乗っていても利用できる。六人でも一人の手帳があれば割引料金にしましょうという形での有料道路の割引が実現するようです。これも、我々の声がようやく実現したというふうに言えるのではないでしょうか。これが非常に便利になる部分です。
それから便利になったわけではありませんが、動きがあった部分としては、まず踏切における安全対策の問題が出てきました。
皆さん御存じの通り、今年、奈良県で視覚障害の女性が踏切内で自分の居場所が混乱によってわからなくなったようで、電車にはねられて亡くなられました。
この事故を受けて、国土交通省が直ちに動いてくれて、ガイドラインの改定を行ってくれました。その結果、踏切の安全対策として遮断機の外側に点字ブロックをつけると同時に、その踏切内においても、エスコートゾーンに相当する表面に凹凸のある誘導表示等を設置するということが示されました。今後、全国のどれだけの踏切にこのガイドラインに沿った安全対策がとられるかが問題となりますが、こうした動きがあったことを、我々は一人の犠牲者の結果ではありますが、無駄にせずに、全国に広げていきたいと思います。さらに、より一層の安全対策を考えるべく、11月から12月にかけて、検討会が持たれることになっています。
また、今年の7月には無人駅に関するガイドラインも示されました。すなわち、無人化された駅においてはどういう安全対策を考えるのか、どういう誘導策を考えるのかということについて、各鉄道事業者に示したものです。
これらのガイドラインについても、我々は十分に学びながら各地方で事業者や各駅に求めていくということが必要ですし、それがまだ不十分であるならば、そのガイドラインの改定をさらに求めていくことが必要だと思っています。
11.災害対策
次に、道路から少し離れて同じ安全対策の問題ですが、ハザードマップについてです。災害時における安全対策の中で、ハザードマップは災害における安全確保など、減災という面から重要な役割を果たしていますが、このハザードマップのうち、水害に関するハザードマップについて、視覚障害者に使いやすいハザードマップを作成する、ということで動き出しています。
このハザードマップについても、どれだけきちんと自治体が作ってくれるかということについては、我々が各地域で自治体に働きかけないと結果的には絵に描いた餅で終わります。ぜひ皆さん、自治体に働きかけて水害だけでなく、地震の場合も含めた視覚障害者用のハザードマップの作成を実現していきましょう。
12.駅のバリアフリー化
それから、交通面で一つ知っておいていただきたいこととして、ホームドア(転落防止柵)など、バリアフリー化の改良工事を行うための資金をどうするかということが、これまで問題になっていました。これを国と鉄道事業者と自治体で資金を分担して負担するというやり方では、なかなか前に進みません。一つのホームドアをつけるだけで10億円かかったりします。
それらの財源を確保することをスムーズに実現するために、現時点では都市部の全ての鉄道利用者から、10円までの料金を加算して徴収する。負担していただいたお金をプールして、バリアフリーや安全対策のためのお金にあてていくということが、この10月から始まっています。そういう意味では、全ての国民が我々の安全対策のために負担をしてくれているのだということを知っていただきたい。これから徐々に負担すべき鉄道利用の範囲を広げていくことになるようです。全ての国民が、このことに理解を示し、我々に協力してくれているのだということを知っていただきたいと思うのです。
13.情報アクセシビリティ
さて、次に放送分野における問題に触れておきたいと思います。
実は、放送に限らず、国の障害者政策は障害者基本計画という大枠の中で進められています。5年に1度の改定作業が行われています。現在は、第4次障害者基本計画が実行されていて、来年の3月までが第4次の期間とされています。したがって、来年の4月からは第5次障害者基本計画が実施されていくことになります。その改定作業もほぼ終わり、この11月から12月に閣議決定がされると思います。
その中には、例えば放送面でのバリアフリー化、情報アクセシビリティをより進めるように、ということが書かれています。それを具体化するということになると、各民間事業者、NHKに対して、字幕は何パーセント、あるいは音声解説を何パーセント、手話を何パーセントつけるかとか、目標値を設定して進めていきます。ところが、その中で音声解説が非常に低い目標値になっているのです。ひどい場合、今実施されている音声解説を6%実現している放送局があるとすれば、目標値は5%のままになっていることがわかったのです。それを指摘する中で、この部分についても放送分野における情報アクセシビリティの改善ということで、目標値の設定をどうするかという議論が11月から12月にかけてスタートすることになっています。
日視連からも三宅隆組織部長を送り込んで、全国の声をできるだけ反映していき、より多くの番組で音声解説放送が実現するようにしていきたいと思っています。とりわけ緊急放送における音声解説が実現しないと、我々は危険にさらされることになりますので、これを何としても改善させたいと思っています。
14.読書バリアフリー法
次に読書バリアフリー法について少し触れておきたいと思います。読書バリアフリー法は実現してから時間が経ちましたが、その読書バリアフリー法に基づく国の基本計画ができました。そして、国の基本計画に基づいて、どんどん議論も進んでいます。ところが、都道府県ごとの基本計画は、作っていただくことが努力義務になっていて、あまり進んでいません。
非常にすばらしい動きをしたのは鳥取県でした。いち早く基本計画を作って、県立図書館や公共図書館における充実ぶりが実現しています。基本計画ができている地域でも、あまり改善していないところもありますが、そうであったとしても、現状に見合った読書環境の改善、その地域において必要な読書環境の改善をどう実現していくのか、という議論を進めるためにも、この都道府県ごとの基本計画が重要ですので、ぜひとも、このことを各地域で進めていただきたい。
文部科学省にこの件について話を聞きに行きますと、残念ながらまだ文科省に報告されている数は、47都道府県のうち半分も準備が進んでいないようです。基本計画の制定に向けて検討中であるという都道府県を含めても、まだ半分に満たない。そういう状況ですので、もっと我々は頑張らないといけないというふうに思っています。
15.あはき
次は、職業問題にいきたいと思います。
職業問題のトップは、あはきの問題です。あはきの問題での動きをいくつかご報告したいと思います。
まず一つは、これも朗報と言ってもよいのですが、一人親方であるあはき施術所の従事者、我々の仲間が、労働者災害補償保険(労災保険)には入れなかったのですが、これが昨年の審議会での議論を経て、はり・きゅう・あん摩マッサージ指圧師や柔道整復師の自営業者も労災保険の特別加入制度の対象にしていきましょうということになりました。
労災保険は、日本国内で労働者として事業主に雇用され賃金を受けている方が対象で、仕事の途中で怪我をすると保険による治療や休業補償や、あるいは打切補償、年金等が受けられます。
本来、一人親方は人に雇われていないため、労災保険の適用外となりますが、労災保険の特別加入制度によって、一人親方のいわば働く環境を良くしていこうということで、今回、その対象にはり・きゅう・あん摩マッサージ指圧師と柔道整復師が取り入れられました。特別加入制度は、労働者以外で、業務の実態や災害の発生状況からみて、労働者に準じて保護することがふさわしいと見なされる人に、一定の要件の下に労災保険に特別に加入することを認めている制度です。
私たちは、はり・きゅう・あん摩マッサージ指圧師の労災保険の特別加入を実現する中で、日本鍼灸師会と日本あん摩マッサージ指圧師会とそして日視連が一体となって、特別加入をすすめるための日本あはき師厚生会というものを立ち上げました。それによって我々が、例えば仕事中に階段から落ちて怪我をしたとか、指を骨折したとか、やけどでもいいです。そういう場合に、この労災保険の特別加入による、補償を受けることができます。あるいは、往療訪問マッサージの途中で事故に遭った場合、それは交通事故でも溝に落ちた事故でも、利用できることになります。
保険の範囲が、この労災保険という分野で提供されることになって、我々にとって、またひとつ大きな安全が広がったのですから、この特別加入にぜひ皆さんも加わっていただいて、我々の地位の安全性、我々の仕事における安心感というものをさらに作り出していっていただきたいと思います。
もう一つ、あはきの関係での動きとして、皆さんに前にも報告したことがあるかと思いますが、新しくあはき国家試験に受かってくる方が、健康保険を取り扱おうとする場合は、施術管理者の登録が必要です。その施術管理者には、一定の就労経験とそれから研修を受けることが義務づけられています。その研修が回を重ねて、非常にたくさんの方がこの研修を受けるようになってきました。ところが、視覚障害者であはき国家試験合格者の中から施術管理者の研修を受ける人の数がとても少ないという現実があります。非常に残念なことです。
我々もこれからは健康保険の取り扱いに慣れていって、自由診療の部分と健康保険適用の部分の組み合わせによって、患者さんのニーズに応え、時には患者さんをいわば導いていくために、我々の施術所のあり方としても重要な場面になってきます。
この施術管理者の研修を受ける際に、テキストは全部準備されています。点字のテキストも準備されておりますし、視覚障害に対する配慮もやっていただけることになっていますので、皆さんの周辺でも、そのことを認識しておいていただければありがたいと思っております。
16.就労問題
次に、一般就労についてです。この間、公務員になる視覚障害者がたくさん増えてきました。例の国の水増し問題をきっかけとして、視覚障害の仲間たちも国家公務員にどんどん採用されていきました。
そういう人たちの働く現場がどうなっているのか、ちゃんと働きやすい現場になっているのか、声を聞いたり、今後、一般就労をさらに進めていくにはどういう課題があって、どういう現状の問題点があるのかを検討したり、議論するための懇談会を開こうと呼びかけてきました。その手始めとして先日、大学の先生二人とそれから、元職安にいた障害者雇用のベテランの方と、そしてわが組織のメンバーで厚生労働省のOBである吉泉豊晴情報部長や工藤正一総合相談室長にも加わってもらい、就労問題に関する懇談会・勉強会を開催しました。
ここでの議論を基礎として、近い将来には継続的にこの問題を検討していく委員会・懇談会を立ち上げて、働いている人たちの声を聞いたり、あるいは実態調査をしたり、国との交渉を持ったり、経団連等の事業団体との話し合いの場を持って行くということを、今後やっていきたいと思っています。
17.日視連の活動
最後に、組織内部の動きを報告します。組織活動は、今まで報告してきたことと重なる部分もございます。
まず、陳情活動です。8月に陳情活動を実施したことを報告しましたが、その際、これまで以上に意識しながら行ったことがあります。それは、単に言いたいことを言い、役所の回答をただ聞いて終わらすのではなくて、項目によっては、さらに資料の提供を求めたり、継続的な検討が必要であるという形で、二回目、三回目の話し合いを想定し、要求活動を継続していくことを進めています。それらについては、今後皆さんにどういう項目について継続的な交渉ができたか、小さくてもどういう進展があったかなどを報告していきたいと思っています。
次に、来年の全国大会についてです。来年の全国大会は、奈良県の橿原市で行います。辰已壽啓会長の下で、大会を開催していただくことになります。
この大会では、先に報告した踏切事故について、より安全な移動を考えるために、道路のうち最も危険な二つの場所、踏切と横断歩道における安全対策についてのシンポジウムを、外部の関係者にも参加していただいて実施したいと思い、計画しています。
全国大会そのものは名古屋にほぼ準じた形で、団体長会議は会場参加とオンライン参加のハイブリッド方式で実施し、シンポジウムもハイブリッド方式で実施することになる予定です。そして、全国大会そのものはYouTube配信になります。
皆さんから上がってくる陳情・要求項目については、今年と同じように4月のうちに三つの分科会をオンラインで開催し、そこで十分な議論をしていただいたものを集約して全国大会に持ち込んでいきたいと思っています。
次に、調査研究についてです。いろいろと調査研究を行っている中で、一つはECLO(エクロ)というものについて勉強しています。
ECLOとは、イギリスで行われている相談活動です。英国王立盲人協会は、イギリス国内全ての眼科に対して、視覚障害に詳しい相談員や視覚障害当事者の相談員を各眼科に派遣しています。そして、視力が低下したり、失明を宣告されたりした方に対して、その相談員が相談に乗ります。眼科治療に加えて、視覚障害福祉に非常に精通した相談員が、患者さんと接点を持つことによって、その方が家に閉じこもることにならないように、自殺に結びつかないようにして、一日も早く社会復帰できるようにする役割を果たすのがECLOという制度です。
これを日本にも導入したいということで調査研究を進めています。また、国に対する要求活動の中でも、自民党の予算対策会議でも、ECLOの制度を日本に一日も早く実現してほしいとお願いしています。来年までに我々の実態調査や外国の制度について学んだことを一つの報告書にして、日本版ECLOの実現に向けた提言に結びつけようとしています。
代筆・代読についての調査研究は、先ほど報告した通りです。
次に、いろいろな部会での活動を報告します。弱視部会は非常に活発に活動しています。常任委員会での議論や各話題を持ち寄っての情報交換会、あるいは外部の講師を呼んで、弱視に特化した勉強会も行ったりもしています。このように弱視の問題について組織的に議論を積み重ねて、これをさらに広げていく取り組みをしています。とりわけ、外部に広げていく例としては、日本眼科医会との連携によって、弱視の方の困り事や弱視の方の悩み事をパンフレットにしたものを、日本眼科医会を通じて全国の眼科に配っていただいて、それを患者に届けるとか、あるいは我々と地域ごとで繋がり、都道府県ごとでのスマートサイトといわれているような、そういう地域のネットワーク作りに結びつけていく役割を果たそうとしています。
それから、我々の組織で地域における非常に大きな課題として、高齢化、会員数の減少、役員のなり手不足、財政難等々、地域団体の活動が非常に窮屈になってきています。非常に苦しくなってきています。このままでは弱い組織は潰れていくということも、決してよそ事ではありません。それを防ぐためには、今、小さくなってしまった団体、地域での活動が十分にできていない団体にどういう支援をすれば、どういう事業を持ちかければいいか。その団体に日視連がどういう援助をすれば、地域で存在感を示せるか、地域での活動の活性化、会員数の拡大、組織活動の強化に結びつくのかということを考えていきました。
全国でのアンケート調査や訪問調査も進めています。12月の日視連の理事会でこの中間報告を提示して、その内容で、皆さんに概ねの了解をいただいたら、さらに修正を加えたもので来年3月までに最終版を作って全国に配布しようと思います。そこには、我々がこれまで考えてきたこと、これまで調べてきたことを、全国の実態に見合った形で事業提案しようと思っています。あなたのところは、この事業を実施したらどうかと。それを実施するためには、どういう支援をすれば、その事業をその団体が実現できるかということを示していこうと思います。
もう一つは、我々は5年後、10年後を見据えた将来ビジョンというものを作りました。活動の指針となるものです。しかし、これは作ったままで放っておけば、過去の産物でしかありません。日々動いていく社会の中で、そういう将来ビジョンを一度作っても、次々と改訂していく必要があります。しかも、障害者権利条約、そして今年示された総括所見、これらも踏まえた我々の将来ビジョンというものを考えなければなりません。かつて作った将来ビジョンの見直しを急ぎ行う必要があります。その意味で、この将来ビジョンの見直しは、権利条約及び総括所見の学習をする中で作業をするべく、今、検討・準備を進めています。
次に、女性問題です。女性協議会の皆さんには、日々の暮らしの中での困りごとを考え、各種の陳情項目を出していただいていますが、さらに一歩進めた活動が必要ではないかと思っています。
例えば、視覚障害女性ということで、複合差別と言われている二重の差別を受けるのではないか。そういう場面においては、どういう支援が必要になるのか。単に障害者に対する支援というだけでは足りませんし、女性に対する配慮というだけでも足りません。その二つをどういう形で統合し、複合化して考えるべきか。今まで十分に議論されてきませんでした。
時には、性に対する暴力という場面で出てくるかもしれません。あるいは、就労の場面で、女性であって、障害者であるがために、賃金の差が現れるかもしれません。どの場面でも、視覚障害女性であることによる二重差別、複合差別に対する問題を含めての女性特有の問題です。ジェンダー平等ということも叫ばれているわけですから、これを女性協だけに任せるのではなくて、日視連本体の活動として女性問題にも取り組むという構えが必要だと思っています。例えば、これまで子育ての問題は女性協に任せてきました。これはどう考えてもおかしなことです。ジェンダー平等というならば、子育ては男女、父と母、両方の責任になります。女性問題を考えるときに、女性に任せるというのは、明らかに我々の体制としては無責任ということになります。
そうならないためにも、今年は、日視連本部として、女性問題をどう考えるかということを議論してきました。DPI女性ネットワークという組織で活動してきた皆さんにご参加いただいて意見交換を試みました。来年度はさらに女性協の皆さんと相談しながら、本部に女性問題を考えるための仕組みを作りたいと思います。例えば、女性協の中に男性も含めた視覚障害女性に対する、二重差別の問題を考えていくグループを作る等来年は形にしていきたいと思っています。
以上、報告してきたように、我々は、外部との繋がり、内部の活動の充実、どちらを取ってみても、それらはバラバラではありえず、常に国の動きに対応しながら組織活動を行っていかなくてはなりません。今後とも組織の活動を、国の動きとマッチした形に変化しながら充実させていきたいと思っています。
そして地域との関係もどういう形で進めるのか。今までのように地域は地域のことで考えればよいというのではなく、デジタル化の進む今後の社会の中で、日視連と地域の団体がどのように連携すれば、より良い視覚障害者運動になるのかということを皆さんと考えなければなりません。皆さんとの連携の中で一体感のある活動をより一層進められるようにしていくことを決意として申し上げて、私の中央情勢報告を終わります。
3 視覚障害者協会の動き …… 会長 片岡 美佐子
このコーナーでは、令和4年7月~12月末までの活動内容を大まかに報告いたします。
毎月第1火曜日の13時から16時まで、本会事務所において相談窓口を設置しています。
7月 5日 県庁で、障害福祉課担当者と意見交換
7月17日 グレートパンプキンで、本会さわやかクラブカラオケ交流会
7月28日 オンラインで、日本視覚障害者団体連合(日視連)理事会
8月 3日 センターで、川柳・短歌教室
8月 5日 オンラインで、日視連加盟団体支援プロジェクト委員会
8月 6日 オンラインで、日視連弱視部会委員総会
8月19日 きらめきプラザで、岡山県身体障害者福祉連合会(身障連)表彰審議委員会
8月19日 第71回中国ブロック視覚障害者福祉大会(岡山県大会)会場確保のため、きらめきプラザ管理者へ挨拶
8月21日 センターで、本会人事委員会
8月24日 オンラインで、日視連副会長として厚生労働省へ陳情
8月31日 オンラインで、第68回全国視覚障害女性研修大会(福島県)
9月 7日 オンラインで、日視連副会長として経済産業省へ陳情
9月10日~11日 第70回中国ブロック視覚障害者福祉大会(広島市大会)
9月14日 オンラインで、令和4年度バリアフリープロモーター会議
9月18日~19日 福岡県で、第68回全国視覚障害青年研修大会
9月28日 オンラインで、日視連正副会長会議
10月 1日 岡山駅前で、岡山県赤い羽根共同募金会セレモニーと募金活動
10月 2日 センターで、本会表彰委員会、第2回理事会
10月 5日 センターで、川柳・短歌教室
10月 7日 オンラインで、日視連全国団体長会議
10月13日 岡山市民会館で、岡山県総合社会福祉大会
10月13日 センターで、ヨガ教室
10月16日 岡星寮(こうせいりょう)まつり
10月20日 視障協文芸作品コンクール締め切り
10月27日 岡山駅前で、第22回全国障害者スポーツ大会「いちご一会とちぎ大会」岡山県選手団及び岡山市選手団合同決断壮行式
10月27日 オンラインで、日視連弱視部会意見交換会
10月29日~30日 センターで、中国ブロック三療研修会
11月 1日 岡山県立岡山盲学校運営協議会
11月 6日 旭川河川敷で、タンデムサイクリング大会
11月 7日 センターで、電業協会様と株式会社電工社社長 福井 良様より訓練用白状の寄贈。贈呈式
11月10日 センターで、ヨガ教室
11月13日 岡山総合グランドで、おかやまマラソン ケアステーション マッサージ・はり施術奉仕活動。会員と関係者14名参加
11月14日 県議会棟で、自民党へ陳情 自然災害等について、県下に在住する視覚に障害がある者に対するハザードマップ・避難所等の適切な情報提供を要望します。
一般に配布されているハザードマップでは、視覚障害者にとっては、把握が困難です。そこで、各市町村にある担当部局で、視覚障害者の電話での問い合わせに対して、丁寧で適切な情報を提供していただけるよう対応をお願いします。
その他、中国ブロック広島市大会での決議事項を提出しました。
11月15日 オンラインで、日視連正副会長会議
11月20日 きらめきプラザで、第64回岡山県視覚障害者福祉大会
11月27日 センターで、視障協点字に親しむ会
11月27日 倉敷アイビースクエアで、本会顧問千田博通(せんだ ひろみち)先生後援会総会
12月 2日 オンラインで、日視連支援プロジェクト委員会
12月 7日 センターで、川柳・短歌教室
12月 7日 オンラインで、日視連中間監査
12月 8日 センターでヨガ教室
12月12日 オンラインで、日視連理事会
以上、関係の皆様には、大変お疲れさまでした。ありがとうございました。
4 第64回岡山県視覚障害者福祉大会の報告 …… 副会長 川口 常雄(かわぐち つねお)
第64回岡山県視覚障害者福祉大会は、11月20日、岡山市北区南方2丁目13-1の岡山県総合福祉・ボランティア・NPO会館(きらめきプラザ)において、さわやかな秋晴れの中、そしてコロナ感染予防対策を十分に取りながら、会員・関係者100余名が参加して開かれました。
第1部の式典では、片岡美佐子会長の開会の挨拶に続き、組織功労の会員に対する表彰状、点訳・朗読奉仕活動の感謝状等の贈呈が行われ、来賓の皆様から祝辞をいただきました。
第2部の議事では、大会決議処理報告ならびに事業報告、今年度運動方針ならびに事業計画に続いて、大会宣言と7項目の決議を採択しました。会場からはたくさんの質問や意見も出され有意義な時間となりました。
議事終了後、視障協文芸作品授賞式が行われ、川柳・俳句・短歌と3部門、各々3名の表彰と作品の紹介がありました。
この大会で決議された要望事項は次のとおりです。
(1)点字を文字として認めることを要望する。
(2)同行援護事業所、従業者数を確保するとともに、同行援護事業における地域間格差をなくし、個人のニーズに合った支給量を得られるように要望する。
(3)重度障害者等就労支援特別事業として、通勤に同行援護が利用しやすいものにすることを要望する。
(4)あん摩師等法19条を死守し、視覚障害あはき師への支援策の確立や無資格医業類似行為者の取り締まり強化によって、視覚障害あはき師の生計と職業領域が維持されるよう要望する。
(5)視覚障害者が必要とするすべての交差点への、音響式信号機、エスコートゾーンおよび誘導用ブロックの設置を要望する。
(6)スーパーマーケットやコンビニ等がセルフレジ化した場合でも、視覚障害者が1人で利用できるよう、店員(支援者)の配置や、店員対応のレジを残すことを要望する。
(7)視覚障害者が使いやすい音声機能対応のフィーチャーフォンの製造を続けていただくよう要望する。
5 令和4年度第70回日本盲人会連合 中国ブロック盲人福祉大会(広島市大会)報告 …… 岡山県視覚障害者センター所長 川田 忠茂
標記の大会が3年ぶりに、令和4年9月10日(土)11日(日)の両日、広島市で開催されました。本会からは、片岡会長以下9名が参加しました。
1日目は、全五部会が2会場に分かれ、①広島市総合福祉センターで、一般部会、あはき部会、青年部会、女性部会が、②広島市心身障害者福祉センターで、スポーツ部会が催されました。今回はコロナ禍もあり、ズーム参加を含め、中国地区6団体から持ち寄った議題について慎重に審議しました。
そのあと、全体会議で意見交換ののち、講演会が開かれました。
講師は日本視覚障害者団体連合会長、竹下義樹氏で、演題は「中央情勢報告」でした。視覚障害者をとりまく最近の情報を楽しく聞くことができました。
夕食会は、コロナ対策が十分とられたホテルグランヴィア広島で催されました。
2日目は、9時30分からホテルグランヴィア広島で「第70回中国ブロック盲人福祉大会」が開催され、前日に続きズーム参加を含め、参加者は約150名でした。
会場参加とズーム参加を合わせた会議をハイブリッド方式と呼ぶようです。色々な会がこの形式で開催されるようになりました。今後会場参加だけに戻ることがあるかは不透明な状況です。
竹下会長の話で下のような気になったことがありました。
視覚障害あはき師養成に大きな貢献をしてきた、盲学校(視覚支援学校)の専攻科理療科・保健理療科の入学者数が全国的に激減している。この状況が続けば、職業過程の存続問題が現実身を帯びてくる。現在筑波技術大学の鍼灸科学生確保、筑波大学付属専攻科理療科入学者の確保が課題になっている。これ等に伴い筑波大学理療科教員養成施設学生数への影響も考えられるとのことだった。
式典後議事、代表者会議報告がなされました。
令和5年度は岡山県が当番県に当たっています。
この大会で採択された決議は次のとおりです。
大会決議
一、公的・民間でのバリアフリー化にユニボイスコード普及を要望する。
一、音響式信号機に、夜間・早朝の音響が止まる時間帯を補う「高度化PICS(歩行者等支援情報システム)」の併設を要望する。
一、各市における養護盲老人ホームへの入所措置控えの解消を要望する。
一、雇用主が独自に行う視覚障害者への通勤支援に対して国・自治体はその費用等を助成することを要望する。
一、同行支援事業のサービスが継続的に受けられるよう報酬単価の引き上げを要望する。
一、補装具や日常生活用具の基準額(費用・補助額負担)を適切な引き上げを要望する。
一、セルフレジは、政策や設置について視覚障害者が無理なく使用できるように配慮していただけるよう要望する。
一、視覚障害者が、スマートフォンが使いこなせるようになるまで講習が受けられる体制作りを要望する。
一、入院時のヘルパー利用について、その制限を撤廃するよう要望する。
一、自治体や民間でのヘルスキーパー雇用の促進を要望する。
一、商品についているQRコードに、視覚障害者が指先で触れて位置を確認できるような印をつけて頂くよう要望する。
一、訪問マッサージに従事する視覚障害者が増加しているが、マッサージの保険診療の施術料が余りにも低い。マッサージの保険点数の大幅な引き上げを要望する。
令和4(2022)年9月11日
第70回日本視覚障害者団体連合中国ブロック視覚障害者福祉大会
6 第70回日本視覚障害者団体連合中国ブロック視覚障害者福祉大会(広島市大会)報告と感想について …… 青年部部長 掛谷和夫(かけや かずお)
令和4年9月10日(土)~11日(日)に、「第70回日本視覚障害者団体連合中国ブロック視覚障害者福祉大会(広島市大会)」が開催され、参加してきました。
大会スローガンは、
目指そう、差別のない共生社会の実現を。
掴もう、デジタル技術とすぐに役立つ情報保証。
拡げよう、視覚障害者の就労の場。
築こう、時代に応じたこれからの福祉。
1日目は、分科会、全体会議、講演・質疑応答、会長・女性部長会議等が行われ、2日目に、大会式典が行われました。
青年部会の提出議題は、
岡山県から、踏切について
広島県から、青年部組織強化・拡大の為、各団体の取り組みについて
島根県から、島根県青年部の組織作りに向けての交流会開催報告
広島市から、中国ブロック青年部研修大会の開催方針について
鳥取県と山口県からは、無し
中国ブロック青年部も各県共に、メンバー不足と高齢化も影響し、さらに、コロナウイルスの影響で、慣れないオンライン操作等、今後の課題も山積みです。
岡山県からも久しぶりの議題提出となりましたが、JRに関しては、無人駅の増加も深刻です。今後のオンラインでの情報交換等にもプラスになる大会ではありました。
7 第70回中国ブロック大会女性部会に参加して …… 女性部部長 鈴木 鈴子(すずき れいこ)
9月10日・11日に広島市で開催されました、中国ブロック視覚障害者福祉大会に参加いたしました。
県女性部部長鈴木と、副部長の川田弘美さんの二人での参加でした。2人とも初めての参加でしたが、他の団体の女性部のみなさんと有意義な交流を行うことができました。
女性部会では、各団体から提出された議題に対して、討議しました。
6団体のうち、3団体からセルフレジに関する議題が提出されておりました。みなさんがそれぞれの立場で、不便を感じており、少しでも使いやすいものにしたいというお気持ちの表れではないかと感じました。
また、スマートフォンに関する議題もあり、日常の生活でスマートフォンの使用に不便を感じている方が多くおられるのだということを改めて確認することができました。
部会には、広島市の会員の方々の参加もあり、直接ご意見を聞くこともできました。
全体会の後は、部長会議が行われました。団体を継続していくための工夫や、行事を行うための困りごとなどを共有できる貴重な時間となりました。
今回はハイブリッドの大会でしたので、直接お会いできなかった団体の部長や副部長もおられましたが、意見の交換ができたことは、とても良い学びになりました。
来年の中ブロ大会は、岡山での開催です。みなさんご協力よろしくお願いいたします。
8 第68回全国視覚障害女性研修大会 北海道・東北ブロック(福島大会)に参加して …… 女性部部長 鈴木 鈴子(すずき れいこ)
令和4年8月31日(水)~9月1日(木)に開催を予定されていました福島大会は、全国的なコロナ感染症の急激な拡大により、急遽、日程が8月31日(水)1日だけの開催となり、開催方法も、オンラインとなりました。そこで、今回は、部長の鈴木と、副部長の川田弘美さんとで参加しました。
8月31日午前は、全国代表者会議でした。
Zoom入室がスムーズにいかず、開会が少し遅くなりましたが、議事はスムーズに進みました。
昼食・休憩の時間を利用して鶴賀イチ先生の講演が録画で上演されました。もっとゆっくりお話が聞けたらと、ちょっと残念でした。
午後からは、YouTubeでもライブ配信されました。開会式の後、「災害を乗り越えて、今、伝えたい事「震災、豪雨、コロナ禍」をテーマにレポート発表がおこなわれました。各ブロックの代表の方が、それぞれの体験や思いをお話されました。発表後は、Zoomで参加されている会員の方からの感想や意見、体験談も飛び出したりして、有意義なレポート発表だったと思います。
実際に水害に遭われた方のお話は、鬼気迫るものがありました。皆さんが共通でお話されたことは、日ごろからの準備と周りの方々とのお付き合いでした。こころに止めておきたいと思っています。
大会議事・閉会式と続き大会は、終了となりました。
県視覚障害者協会事務局、視覚障害者センターそれぞれの方々にサポートいただき無事に参加できたことに、感謝いたします。
来年は、神奈川県です。全国のみなさんとリアルにお会いできることを願っています。
9 第68回全国視覚障害青年研修大会(福岡県大会)の報告と感想 …… 青年部長 掛谷和夫(かけや かずお)
令和4年9月18日(日)~19日(月・祝)に、社会福祉法人日本視覚障害者団体連合「第68回全国視覚障害青年研修大会(福岡県大会)」が開催されました。コロナウイルスの影響で、オンラインでの開催になりました。
大会スローガンは、
踏み出そう!ゆっくりでも確かな一歩
実現しよう!安心・安全な街づくり
合わせよう!若い視覚障害者の力を結集して
9月18日(日)は、代表者会議、研修会「持続可能な組織を目指して~青年(ユース)部の役割とその可能性とやりがい」等が行われました。9月19日(月)は、情報交換会、大会式典が行われました。
情報交換会は、青年部活動、職業、日常生活、ICT、結婚・子育て等の分野別に少人数グループにて情報交換会が行われました。
オンラインでの開催だと参加可能な方もいらっしゃいますが、メリットやデメリットの課題もある大会だったと思いました。
10 令和4年度 岡山県視覚障害者協会主催文芸作品コンクールの結果報告 …… 担当理事 竹内 昌彦(たけうち まさひこ)
今年度も多くの方からたくさんの応募があり、関係者としてうれしく思うと同時に、ご協力くださった皆さんに心から感謝いたしております。
今回は川柳に14名から41句、俳句に12名から33句、短歌に11名から30首が寄せられました。その中から入選された作品をご紹介します。川柳の場合は作品が多いこともあり、今年度も佳作を3句選んでいただきました。来年度も今年と同じように行いますので、皆さんふるってご応募ください。お待ちしています。
文芸作品審査結果および講評
川柳の部
選者 従野 健一(よりの けんいち)先生
天 竹内 昌彦 さん
自立へと 一歩踏み出す 白い杖(じりつへと いっぽふみだす しろいつえ)
(評)自立へと、夢と希望に満ちた第一歩、でも、不安ばかり。でも、白い杖があればだいじょうぶと言い聞かせながら力強く、踏み出そう、との気持がでてる句です。
地 鈴木 鈴子(すずき れいこ) さん
幸せの 杖はあなたの 太い腕(しあわせの つえはあなたの ふというで)
(評)いざという時はやはり杖よりも腕の方がずっと頼りになるほのぼのとした夫婦愛が感じられます。
人 井上 健一(いのうえ けんいち) さん
こわごわと 歩く姿に 助け杖(こわごわと あるくすがたに たすけづえ)
(評)こわごわ歩いているのをみれば自分も不安になり、杖を貸してあげよう、と思う優しい気持ちがよく出たくです。
佳作1 末安 章雄(すえやす あきお) さん
手引き妻 肩の動きで 機嫌知る(てびきつま かたのうごきで きげんしる)
(評)仲のよい夫婦で、歩き慣れているので、ちょっとした肩の動きで、どんな気持ちか、よくわかるのです。
佳作2 松下 陽子(まつした ようこ) さん
墓参り 母の小言か 蝉しぐれ(はかまいり ははのこごとか せみしぐれ)
(評)久しぶりに、母の墓参りに行き、ご無沙汰を詫びながら、手をあわせていると、蝉しぐれが聞こえ、あたかも私を叱咤するかのように。
佳作3 久保 瞳(くぼ ひとみ) さん
杖歩行 優しい声に 助けられ(つえほこう やさしいこえに たすけられ)
(評)杖歩行は、まわりのみんなに、見もられ、優しい声をかけてもらえると、ずいぶんと助かり、それが心の杖になるのです。
俳句の部
選者 土師 康生(はじ やすお)先生
天 小原 伸一郎(こはら しんいちろう) さん
老僧のこれはこれはと大すいか(ろうそうの これはこれはと おおすいか)
(評)盆の供養に訪れた老僧に、西瓜を差し上げた。西瓜の見事な大きさに老僧が「これはこれは(見事なものですな)」と思わず声を出した。そのような光景が自然に浮かびます。老僧とすいかの取り合わせが絶妙です。これが「高僧」とか「虚無僧」とかだとイメージが違う。おおらかな佳い句ですね。
地 武藤 孝夫(むとう たかお) さん
指先に馴染む点字や夜の秋(ゆびさきに なじむてんじや よるのあき)
(評)「夜の秋」は、夏の終わりごろ夜になると涼しく秋めいて感じられる、その感じを表した夏の季語です。それは寂しさとも、落ち着きともとれる一つの澄んだ味わいのある季語です。上五、中七がその季語の味わいにとてもマッチしています。
人 小林 政利(こばやし まさとし) さん
金属音低く飛び蝙蝠の恋(きんぞくおん ひくくとび こうもりのこい)
(評)「猫の恋」は春の季語ですが、「蝙蝠の恋」は季語ではなく、「蝙蝠」で夏の季語です。中七と下五を句またがりにして詠まれています。蝙蝠は超音波を出して生活していると聞いていましたが、ネットで調べて、その音を初めて聞きました。確かに金属音に近いのですね。意外なポイントを突いた句です。
短歌の部
選者 土師 康生(はじ やすお)先生
天 竹内 昌彦 さん
沖縄の渚は自然のオルゴールサンゴの破片揺れて奏でる(おきなわの なぎさはしぜんの オルゴール サンゴのはへん ゆれてかなでる)
(評)沖縄へは何度も行きました(修学旅行ばかりです)が、こういったロマンチックな、メルヘンチックな歌は作れませんでした。沖縄の情緒をよく捉えた歌です。同じ海辺でも、「瀬戸内」などの持つイメージではこの雰囲気は出ません。地名の持つ力です。短歌にはこうした具体的な固有名詞を使うと力が出ます。
地 武藤 孝夫 さん
迷いつつ鍼探り打つ手元をば見つめいるらし患者しずかに(まよいつつ はりさぐりうつ てもとおば みつめいるらし かんじゃしずかに)
(評)具体的な事柄を丁寧に詠むことで一首のまとまりが出ています。具体的に詠むことで、読者にその情景がよくわかります。そして結句の「患者しずかに」の患者の気持ちを読者も共有できるのではないでしょうか。
人 藤沢 弘一(ふじさわ ひろいち) さん
黒光りの茄子の背中に包丁で×を入れをり調理実習(くろびかりの なすのせなかに ほうちょうで ばつをいれをり ちょうりじっしゅう)
(評)この句も具体性の強さを感じさせるものです。茄子が黒光りする立派なものであること、包丁で茄子に×をいれること、この二つを読者にきちんと伝えていることで歌が成立します。歌は丁寧に詠むこと。そうすれば読者の理解や共感が得られます。
11 さわやかクラブ交流会報告 …… さわやかクラブ部長 篠原 春樹(しのはら はるき)
新型コロナが気になる状況ではありましたが、3年ぶりとなる「さわやかクラブ交流会」を開催することができました。カラオケが好きな方を中心に、付添含め21人が参加されました。
片岡会長の開会挨拶に続き、全員の自己紹介、その後は時間が経つのも忘れて、歌におしゃべりに、あっと言う間の3時間は大いに盛り上がりました。
今回の参加者はほとんどが岡山市内の方でしたが、来年度は県内各地から、歌が好きな方々、また、懐かしい方とのおしゃべりだけでも大歓迎!多くの方のご参加をお待ちしています。
開催日時 令和4年7月17日(日)13時~16時
場所 カラオケ・グレートパンプキン(岡山市北区奉還町)
参加費 無料
参加者 会員16名 付き添い5名
12 令和4年度「点字に親しむ会」報告 …… 担当理事 大賀 淳(おおが じゅん)・鈴木 鈴子(すずき れいこ)
11月27日(日曜)、10時~12時に岡山県視覚障害者センター第3会議室で開催され、昨年からは2倍となる、会員と付き添いを合わせて20名の参加でした。
メインの点字校正問題の出題は点字技能師の竹野磨智子さんで、初心者には優しく、ベテランにはミスを誘うよう、工夫を凝らした内容でした。昨年は初心者で初参加されて全くできなかった方が、今年は数問の正解を出されて参加者から大きな拍手を受けていました
また、点字が書かれている日用品や食料品の実物を使ってのクイズでは、生活に役立つ点字の学習ができました。身近な生活の中の様々な場所に点字が使われてきています。それらを少しでも利用できれば、わたしたちの暮らしがもっと便利になること間違いなしです。最後には「来年も参加します!」の声が会場に広がりました。
成績は以下の通りです。
1位 藤澤 弘一(ふじさわ ひろいち)さん、2位 大賀 淳さん、3位 松下 陽子(まつした ようこ)さん。
13 グランドソフトボール部 本年の活動報告 …… グランドソフトボール部部長 戸根 順也
いつも、グランドソフトボール部へのご支援、本当にありがとうございます。
勝ち負けはともかく、「今年こそ思い切りグランドソフトボールを楽しみたい」そんな思いで、3月より練習を開始しました。
4月17日には、徳島・香川チームを迎えて練習試合も行い、徳島県とは接戦もできました。しかし、コロナの影響は依然として大きく、練習も、仕事環境の変化や、小さな子どもがいる部員は参加を控えるなど、なかなか思うようにはできませんでした。
他県も事情は変わらないようで、5月に広島で開催される予定だった中国大会も、残念ながら中止となってしまいました。
秋には数回練習はやりましたが、正直、状況は変わっていません。しかし、来年の中国大会は、岡山県が主催になっていますし、4月には練習試合も計画しています。
情けないことばかり書いてきましたが、練習に参加できている部員は、みんな元気です。
みなさんのご協力をいただき、中国大会は、チームとして参加し、成功させたいと思っています。今後ともよろしくお願いいたします。
14 フロアバレーボール部報告 …… フロアバレーボール部部長 上山 照正(うえやま てるまさ)
コロナ禍で1年半ほど講習会や練習をお休みしていましたが、現在は少ない人数ですが、ぼちぼち再開しています。少し詳しく説明させていただきます。
2020年2月9日の市長杯以来、1年半ほど練習を休ませてもらっていました。フロアバレーボールは特に前衛はブロックで隣の人と接触、また相手ブロックともネットを挟んで対面で接近するので、これからどうなるのかと思っていました。しかし、1年前の2021年11月から、講習会や練習を少しずつ再開しています。
例年の名古屋エンジェルカップ参加については、メンバーで話し合い、仕事に支障が出てもいけないのでということでやめておくことになり、それがまだ続いています。マスクをしながらの少ない人数ですが、頑張って続けているという感じです。
全国的には、大会も開かれており、名古屋でのエンジェルカップも3月に続けて行われているようです。まだまだ感染者が多い岡山県ですが、早く終息し安心してマスクなしでフロアバレーボールが楽しめるようになるといいと思います。
人数が少ないので、初めての参加者大歓迎です。いつでもお声かけ下さい。
問い合わせは、部長・上山(うえやま)
電話 090-3174-2249
自宅 086-245-9553
今後ともよろしくお願いいたします。
15 中国ブロック三療研修会の報告 …… 報告者 三療部部長 長谷川 律夫(はせがわ のりお)
平素より、諸事業に対して皆様のご支援ご協力をいただいておりますことに、心よりお礼申し上げます。
さて、2年間延期しておりました三療研修会を下記の要領で実施いたしました。
日程
10月29日(土)
14時30分~15時 受付
15時~17時まで 研修会・意見交換会
15時10分~16時 研修会
演題:作業所における「あはき治療院」の経営について
講師:社会福祉法人 岡山ライトハウス理事長 竹内 昌彦(たけうち まさひこ)先生
社会福祉法人 岡山ライトハウス 1979(昭和54年)に点字出版所として誕生、 就労継続支援 B型作業所「にじ」 2011(平成23)年岡山ライトハウス内に設置。
2015(平成27)年 岡山市北区表町商店街に「あしたば治療院」を、
2019(令和1)年 JR北長瀬駅前に「あしたば北長瀬治療院」を作る。
B型作業所の概略について
1.設立者の資格
2.施設設備
3.必要なスタッフ
4.運営費
5.給付金
6.利用者への責任 などなどB型作業所について、詳しく説明が行われた。
16時~17時 意見交換会
片岡会長司会のもとで、広島県、広島市、山口県、島根県、岡山県の状況報告があった。
鳥取県は欠席だったが、コロナ禍のため、老人ホームやトライアスロン大会でのマッサージの奉仕活動ができていないことの連絡があった。
18時~20時 交流会
会場:ピュアリティまきび
岡山市北区下石井2丁目6-41(086-232-0511)
10月30日(日)
9時30分~10時 受付
10時 安田会長のあいさつ
10時10分~12時 講演会
演題:情けは人のためならず、帳簿は税務署のためならず
―あはき事業者の視点で、考えてみよう―
講師:公益社団法人日本あん摩マッサージ指圧師会
専務理事 田辺和泉(たなべ いずみ)先生
「あはき事業者の視点・青色申告は有効であることが、詳しく話された。」
12時~13時 昼食
13時30分~14時30分
B型作業所 あしたば北長瀬治療院の見学
(JR山陽本線下り北長瀬駅前)に移動
施設設備の見学をした。
なお参加人数は延べ54人でした。
主催 公益社団法人日本あん摩マッサージ指圧師会中国ブロック
社会福祉法人岡山県視覚障害者協会
共催 公益社団法人日本あん摩マッサージ指圧師会
社会福祉法人日本視覚障害者団体連合あはき協議会
16 岡山マラソンケアステーションに参加して …… 理事 福原 隆行(ふくはら たかゆき)
11月13日(日)3年ぶりに開催された岡山マラソンでのケアステーションに参加しました。私は第1回から参加しているので様子はわかっていましたが、今回はコロナ禍ということもあり、予約制で運営されていました。
いつもながら県下の鍼灸マッサージや柔道整復師の団体がみんなで協力しておこなっているので、ベッドが数十台とかなりの規模です。ケアに訪れたランナーの方も、よそのマラソン大会にはこれだけのケアステーションはなかなかないので楽しみだと話してくれました。
例年、テントの外は大行列で、追われるように施術して、くたくたに疲れてしまうイメージもありましたが、今回は予約制であり、雨天でもあったので、落ち着いてケアすることができました。ランナーは予約の時間に訪れるので、次の人の時間までゆっくりと目の前のランナーと向き合うことができたのは、特にやってよかったなと感じられたことのひとつです。
しばらく会えていなかった仲間の先生方に会えたり、ランナーが走っている間にお互いに施術しあったりできたのも、こういうイベントならではの楽しさです。視覚障害者の仲間も参加しており、どうしても慣れない会場で困ったり戸惑うこともあったかと思いますが、こうして私たちが参加することで周りの鍼灸師や学生も視覚障害者に対してどう接すればよいかが理解しあえると思っています。
それは実社会でも同じことだと思います。日常生活にも困ることや戸惑うことがよくあります。出かけて、あえて介助してもらったりすることで、見えない困難を一緒に考えてもらうことにつながると私は思います。施術者として役に立つことができる充実感とともに、視覚障害の理解を広める意味でも、これからもこういったイベントに積極的に参加していこうと思いました。時々に助けてくださった皆様、ありがとうございました。
17 今年もタンデムサイクリングに参加しました …… 竹野 磨智子(たけの まちこ)
私は、去る11月6日(日)に岡山市の旭川河川敷で行われたタンデムサイクリング大会に参加しました。私はこの大会に毎年のように参加していますが、この会もご多分に漏れず、新型コロナの影響で3年ぶりの開催となり、今年から参加費(千円)がいるようになったものの、とても楽しみにして参加しました。
今年の参加者は24人だったそうで、例年よりやや少なめでしたが、その分、それほど順番待ちをせずに余裕を持って乗れ、よかったです。第27回目となった今年は、いつも以上にサイクリング日和で、天気のよさと風のさわやかさが最高でした。コースは、岡山県庁傍の相生橋東詰めから旭川の河川敷を北に向かい、山陽本線の鉄橋の下を折り返してくるという、いつもとおりのコースで、マラソンの練習をする人、岡山城や後楽園周辺の観光をする人、河原でバーベキューを楽しむ人などを見ながら、また、鳥の声、水の音なども心地よく聞きながら、のんびりした気分で走れました。
私は子供の頃から自転車に乗るのが大好きで、自分の自転車の直前しか見えない視力ながら、1日1回以上乗らないと気が済まないような子供でした。今は全盲になり、流石に一人で乗るのは怖いので、年1回行われるこの大会を心待ちにしています。久しぶりに風を感じながら楽しく自転車に乗れ、本当に楽しく有意義な時間を過ごせました。
毎年この大会を主催し、自転車を会場まで運んだりパイロット役として自転車の前側で漕いでくださっている方々も高齢化が進み、大会の開催も少しずつ大変になってきているようですが、皆さんに本当に感謝しつつ、今後もまだまだ続けていただけたらと思います。
これまで参加されたことのない方も、「久しぶり!」という方も、参加者の交流の場にもなっていますので、また是非、参加なさってみてくださいね。
18 栄えある受賞
本会関係者の栄えある受賞者をご紹介いたします。
岡山県総合社会福祉大会は今年、新型コロナウイルスで受賞者の方のみの参加で開催されました。本会の関係者の受賞は次のとおりです。
岡山県知事表彰は
笠岡支部長の山下淳一(やました じゅんいち)さんが心身障害者福祉功労で、
岡星寮職員の、釜付滋弘(かまつき しげひろ)課長と直原弘美(じきはら ひろみ)支援員、センター職員の神田勝之(かんだ かつゆき)管理主任の3人が社会福祉功労で受賞されました。
岡山県保健福祉部長表彰は
身体障害者福祉功労で瀬戸内支部長の小野田照子(おのだ てるこ)さんが表彰されました。
皆様に心よりお祝いを申し上げますとともに、ますますのご活躍をお祈りいたします。
次に11月20日に開催されました本会主催の第64回岡山県視覚障害者福祉大会では、以下の顕彰をいたしました。
本会の活動によく協力し、社会生活においても他の範となすべき実績をあげている方にお贈りする会長賞に
岡山支部の阿部高秀(あべ たかひで)さん、
伊丹道恵(いたみ みちえ)さん、
田中亨(たなか とおる)さん、
倉敷支部の山口幸一(やまぐち こういち)さん
美作支部の勘藤秀美(かんどう ひでみ)さん。
これからも皆様のご協力に支えられて、会を運営してまいります。引き続きよろしくお願い申し上げます。
また、長年にわたり点訳・朗読奉仕活動を続けてこられたボランティアの方に感謝状とささやかな記念品を差し上げ、日ごろの感謝の意を表しました。
浅口はるか会の 上田裕子(うえだ ゆうこ)様、
岡山県視覚障害者センターの 浅井順子(あさい じゅんこ)様、近成恵美子(ちかなり えみこ)様、
笠岡音訳の会の 齋藤寿恵(さいとう ひさえ)様、丹下君枝(たんげ きみえ)様、
敷音訳の会の 赤木和子(あかぎ かずこ)様、門井恕子(かどい ゆきこ)様、
倉敷朗読研究会の 青木信子(あおき のぶこ)様、赤木八重子(あかぎ やえこ)様、
津山朗読ボランティアの会の 富田教子(とみた きょうこ)様
皆様のおかげで読書の世界が広がり、人生が豊かで潤いのあるものとなります。心よりお礼を申し上げます。
本会に関係する受賞された皆様、誠におめでとうございました。
19 編集後記 …… 岡山県視覚障害者センター所長 川田 忠茂(かわだ ただしげ)
コロナの流行にも変動がみられ、いまだ収束のめどがたたない日々が続いています。このような中ではありましたが、様々な会議がズーム・ハイブリッド・感染対策を十分取った上でリアル形式でも開催されました。
今号は令和4年7月~12月の岡山県視覚障害者協会の活動報告です。また、昨年に続き日視連竹下会長の声の中央情勢報告も掲載しています。様々な行事が催されています。関心のある催しはあったでしょうか。今号を読まれ今後の参加の参考にしていただければと思います。
100年前のインフルエンザのパンデミックの収束には3年を要したそうです。その当時はワクチンもなく、人口の約8割近くが感染し、免疫獲得した結果収束したとのことです。
現状はまだ出口の光明がはっきりしていません。これは感染によるか、ワクチン接種により獲得された免疫保有者数が人口の8割にまだほど遠いことを示しているのかもしれません。免疫抗体を持つ人が多ければ多いほど流行は減っていきます。ワクチン接種のチャンスがあれば生かしていきたいと考えています。