視覚障害者センターだより 〜ロバと五つのにんじん〜 平成27年12月(通巻303号) 発行 岡山県視覚障害者センター 郵便番号 700−0927 岡山市北区西古松268−1 電話 086−244−1121 FAX 086−244−1043 Eメール ossfc@nifty.com 声の欄は随時募集しています。 内容とその形式は問いませんが、ワープロやエディタのデータ、あるいはメールが可能な方は、これらでいただければ大変助かります。 皆さまからの原稿をお待ちしています。 読み始めたら途中でやめられなかった面白い本、おいしかった飲食店、便利グッズ、趣味など何でもけっこうですので、ぜひ声の欄に原稿をお寄せください。 センター便りは、ほぼ同文のものをセンターの点訳・音訳奉仕員に配布しています。 「声」欄の内容を奉仕員にもお届けすることになりますので、ご了承ください。 今月の内容  お知らせ(9件) ・文芸作品コンクール作品募集について ・声 影山 智雄さんから「続原尾島キッド3」  ・声 小林 政利さんから「イスラームの世界 続編 1」 ・声 小野田 清子さんから「日本民謡をテクノ・ニューウェイヴテイストにアレンジしたサウンド」 ・目の不自由な方と家族の集い“どうしてますか交流会” ・新刊案内をお伝えします。 《 お知らせ 》 1.2016年1月の休館日と図書整理日     休館日は毎週火曜日と11日(月)の成人の日です。   また、年末年始の休館日は12月28日(月)〜28年1月4日(月)です。   図書整理日は28日の第4木曜日です。   この日は終日留守番電話対応とさせていただきます。 2.音声拡大読書器「トークンライト」を使ってみました。   音声拡大読書器には、アイフレンズの「トークンライト」と、アメディアの「読むべえスマイル」があり、センターにはこのうちの「トークンライト」があります。   これを使ってみましたので、レポートします。   読み上げさせたい印刷物をガラス面に置いてカバーをします。   印刷物の種類を選び、エンターキーを叩けば読み取りが始まり、間もなく読み上げが始まります。   以下代表的なモードで色々読み上げさせてみました。   @手書き点字や印刷された点字の読み取りと読み上げ。    点字は両面書きでも片面書きでも、読み取ってすぐ読み上げてくれます。    今までのも含め、今回も影山さんからは、点字両面書きで、「原尾島キッド」の手書きの点字資料を送っていただいています。    トークンライトの点字両面読み取りを選べば、2・30秒で読み取り、音声で読み上げてくれます。  また、USBメモリーにベース形式で保存も可能です。    点字の書籍や資料を持ってはいるが、触読が遅くて積読になっている方には、よいかもしれません。  かなりの正確さで読み上げてくれます。 A買い物をするとレシートがすぐたまりますよね。  このモードもあり、けっこう正確に読み上げてくれますよ。  これも様々な形式での保存が可能です。  家計簿をつけるのに役立ちそうです。   B郵便局・銀行の通帳の読み上げモードもあり、縦棒を1と読み上げることもあり、判断が必要なこともありましたが、人に読み上げてもらう必要がなく、十分役に立つだろうなと感じました。   Cワープロで書かれた印刷物はほぼ正確に読み上げてくれました。   D手書き文書も読み上げてくれますが、楷書できれいに書かれたものは、内容が充分分りましたが、どんな文字も読み上げてくれるだろうと大きな期待を持つと、期待外れになるかも。   E新聞・縦書き横書き書籍のモードもあり、正しく選ぶと新聞もけっこう読み上げてくれます。  書籍は縦書きも横書きも新聞以上に正しく読み上げてくれました。     上記以外にも、まだいくつかのモードがありますが省略します。 3.白杖(直杖)を作っていただけます。   白杖の長さを利用者の身長に合わせて作っていただけます。   身長マイナス40〜45センチメートルが標準のようですが、ご希望の長さのものを作っていただけます。   ただし最も長いものでも131センチメートルです。   これ以下であればその長さは自由がききます。   この杖は、ゴルフクラブの不要になったものを再利用して作成するものです。   カーボンシャフトなので非常に軽く、また丈夫です。   上記の身長に合わせる杖をご希望の方はセンターまでお知らせください。   身長に合わせる杖の作成には約2週間お時間をいただきます。     杖は無料で差し上げますが、センターまで受け取りに来てくださればと思います。   来館が難しい方には郵送しますが、送料の実費が必要となります。   4.点字JBニュースを読んでみませんか。     点字JBニュースは、週5日(月曜〜金曜)発行されている点字では10ページの情報誌です。   大きく分けて2種の記事からなっています。   1つは日本盲人会連合が作成した視覚障害者に関する様々な記事で、もう1つは日本経済社からの一般的な記事です。   メール版と点字版の2種で提供しています。   点字JBニュースを新しく読んでみようと思われる方は、センターまでご連絡ください。    費用は無料です。   なおメール版のうち、携帯メールへは視覚障害関連の記事のみになります。     また、電話ナビゲーションサービスが22年の12月からスタートしています。   電話番号が0570−021802 (料金10円/分)へ13時以後に電話し、聞こえてくる指示に従って操作すれば当日の記事を聞くことができます。   5.金融機関に視覚障がい者の立場で望むことがありますか。     「トマト銀行」の行員研修のため、上のテーマでセンター便りの8〜10月号で意見を募集し、多くの方から20件以上のご意見をいただき、報告しました。   協力してくださった皆様ありがとうございました。   以下は要望したことと、お伝えしたいことです。     @改善して欲しいことは、「トマト銀行」内だけで共有するのではなく、県下のすべての金融機関で共有していただきたい旨お知らせしました。   A現在でも対応がなされているサービスで、知らなかったために利用していないものがいくつかありました。       ハンドセット(音声ガイドに従って、テンキーで操作ができる受話器)が用意されているATMが、トマト銀行、中国銀行、都銀、郵便局では100%近く設置されています。     各店では、点字ブロックにより視覚障害者優先のATMに誘導しています。       まだハンドセットのあるATMを使ったことのない方は、行員に操作法を尋ねれば丁寧に対応してくれます。     何回か使用すれば、出金・残高照会などは単独でできるようになります。     他の金融機関ではハンドセットのある店舗とない店舗が様々です。       窓口での送金手数料は、ATMで送金する場合と同額になっています。     このことも、行員に周知徹底するよう要望していますが、皆さんからの声かけも大事ではないでしょうか   B代筆・代読は金融機関によって対応は様々ですが、「トマト銀行」はどの店舗でも対応してくれます。  ただし例外があり、リスクのある商品の代筆はどの金融機関でも行員による代筆は現在はできないようです。   6.2016年版の小鳩文化点字カレンダーを差し上げます。   日本テレビ「小鳩」文化事業団から提供されたものです。   「ふるさとの富士」が各月紹介されています。   ご希望の方は、12月19日以後にセンターへ電話かメールでお申し込みください。   先着順にお送りしますが、数に達し次第終了します。   7.パンフレット類のご案内     パンフレット類(3種類)をご紹介しますので、ご希望の方はセンターまでご連絡ください。    特に記載のないものは、貸出でのみご利用いただけます。   返却期限は資料が届いてからお手元に2週間です。     「やまびこ 昭和45年・新年特別号 復刻版」点字1巻。 名古屋ライトハウス点字出版部発行。点字月刊総合誌「やまびこ」の創刊50年記念。     「平成27年度 障害者のしおり」点字1巻。 岡山市発行。岡山市の方で配付希望の方は、保健福祉局障害福祉課(電話086−803−1236)へお問い合わせください。     「私たちの税金 平成27年度版」点字1巻、デイジー2時間15分。 国税庁広報広聴官発行。   8.雑誌(継続分)のご案内   当センターで取り扱っている雑誌の一部(19種類)をご紹介しますので、ご希望の方はセンターまでご連絡ください。   一度お申し込みいただけば、継続してお送りします。   貸出の場合の返却期限は、資料が届いてからお手元に2週間です。   数量・時間は平均的なものです。   また、内容等でご希望をおっしゃっていただけば、他の雑誌もお探しします。 「壮快」デイジー11時間。配付。月刊。健康。   「きょうの健康」デイジー9時間30分。配付。月刊。健康。   「小説現代」デイジー33時間。配付。月刊。文芸。   「オール読物」デイジー30時間。配付。月刊。文芸。   「趣味の園芸」デイジー2時間。配付。月刊。園芸。   「暮しの手帖」デイジー11時間。配付。隔月。生活。   「きょうの料理」デイジー1時間30分。貸出。月刊。料理。   「オレンジページ」デイジー4時間30分。配付。月2回。料理。   「日経パソコン」デイジー4時間。配付。月刊。パソコン。   「Number」デイジー8時間30分。配付。隔週。スポーツ。   「日経サイエンス」デイジー8時間30分。配付。月刊。科学。   「Newton」デイジー7時間30分。貸出。月刊。科学。   「日経マネー」デイジー11時間。配付。月刊。金融。   「旅行読売」デイジー9時間。配付。月刊。旅行。   「CDジャーナル」デイジー16時間。配付。月刊。音楽。   「婦人公論」」デイジー11時間。貸出。月2回。女性総合誌。   「女性自身」デイジー14時間。配付。隔週。女性総合誌。   「選択」デイジー10時間。配付。月刊。総合誌。   「新潮45」デイジー22時間。貸出。月刊。総合誌。 9.メンタルマップのご案内     先月・先々月号でメンタルマップの紹介をしましたが、以下の点字データ・音声デイジー・テキストデイジーをサピエ図書館に登録しました。   どうぞご利用ください。   点字印刷物・CD(上記3データとWORDデータ)をご希望の方は、お知らせください。   @ 岡山駅さんすて   A 岡山駅東口広場   B 岡山駅前桃太郎大通りバス乗場行き先案内   C 岡山駅東口周辺   D 岡山駅西口広場     引き続き、以下を作成中です。   「岡山駅一番街」「岡山駅東西連絡通路」「岡山駅東口バス乗り場行き先案内」「宇野バス表町バスセンター」 ◎文芸作品コンクール作品募集について  本会(岡山県視覚障害者協会)では恒例の文芸作品コンクールを今年度も実施します。  内容は短歌、俳句、川柳の3部門で、応募は各部門とも一人3首または3句以内で未発表のものといたします。  なお、川柳の場合は3句の内、1句以上は「渡す」(荷物を渡すなどの渡す)という言葉に関連したものにしてください。  残りの句は自由とします。  また、普通文字で応募される場合は、短歌・俳句・川柳とも作品に必ず振りがなを付けてくださるようお願いいたします。 応募方法 郵便・FAX・メールのいずれか 送り先  〒700−0927 岡山市北区西古松268−1                岡山県視覚障害者協会 事務局        FAX番号   086−250−9913       メールアドレス  ossk-33@po1.oninet.ne.jp  選者は土師 康生(はじ やすお)先生 (「龍」(りゅう)短歌会同人)  問い合わせは、竹内 昌彦(たけうち まさひこ)まで (電話086−275−0112)  応募締切は平成28年1月10日(日)必着  なお、各部門とも天(てん)・地(ち)・人(じん)に入選された方には記念品をお送りいたします。  また、応募くださった皆さん全員に参加賞を考えております。  皆さん奮ってご応募下さい。 《 声 》 続原尾島キッド 3           センター利用者 影山 智雄  あの天才少女歌手、美空ひばりのその位置を世に知らしめた歌「東京キッド」にあやかって、それと同じ時期に盲学校に入学し、色んなことにぶつかり、色んなことを体験していった一人の男の子が書きなぐった当時の思い出話。    今回は今までの「昭和25年から37年当時の建物や、その周辺の景色中心にしたこと」から離れて、当時の人との関わりやどんな風に過ごしていたかというようなことに触れてみたいと思います。  〜左のポッケにゃ音楽室の楽器〜  どういう風に書けば適切な表現ができるのか、なかなか適当な言葉が見つからないのです。  昭和25年という年は、少なくとも岡山盲学校にとっては、新しい歴史の始まり、あるいは飛躍の年。  また、視覚障害者が光を浴びるようになった年ではないでしょうか。  かといって盲学校が栄えたり、視覚障害者が増えることを喜んだりする気持ちは少しもありません。  それよりむしろ視覚障害者は我々の時代まででもう充分。  これから後に生まれてくる人達は、皆健康であって欲しいとさえ、願っていましたが・・・  〜その一つが岡盲校歌(作詞 三宅真平(しんぺい)作曲 岡崎勝太郎)ができたことです。  昭和25年は本校創立42周年、11月25日には音楽室を中心に色々な催し物があって、とてもにぎやかな記念日となりました。  そんな中で校歌のお披露目があり、それから1カ月もしない内に、あの大火災が起きてしまったのでした。  その年の6月には、盲児施設岡星寮(こうせいりょう)が開所しました。  当時の寄宿舎は2階建てで盲生が2階に、聾生が1階に住んでいたのですが、岡星寮の開設により、2階と1階の入れ替えが行なわれたのでした。  そのために聾生は逃げ遅れて、16人の死者を出したのですが、私の思いは例え盲生が2階にいても盲生には犠牲者は出なかったと信じています。  岡盲飛躍の年  二つ目の理由は、この年の新入生の数でした。  入学していた人や年度の途中から入学してきた人など、はっきりした数字は覚えていないのですが、小学部1年生で、14人から18人程の生徒が入って来たのでした。  そしてその年齢差は一番上は高校2年に相当し、下は学齢と10年もの開きがありました。  ところがその年上のお兄さんお姉さんと一緒に授業をした覚えがないのです。  それもそのはず、この年の1年生は2組あって、学齢を越えた大きい人達はB組にいたと最近になって話してくれた同級生がいました。  そしてさらに盲学校には超級(学齢を大きく遅れて入学して来た生徒に対して、一定の要件を満たす人には1年経なくても、次の学年に進み、少しでも早く社会に出られるようにも考えられた)という制度で3年生になったころは6、7人の人達はもう上の学年に進んでいました。  この制度では、何年か後に入学した人がいつの間にか上の学年にいるという何とも不思議なことも経験しました。  三つ目の飛躍は人との出会いです。  〜怖い先生優しい先生〜  この分け方は必ずしも適切ではありません。  というのも、そのどちらもが私の人格を完成させるためにはなくてはならない方だからです。  水戸悦子先生〜私は当時満州に渡っていた両親の3人目の子供として生まれました。  お産の時の衛生的な不備で失明したようですが、上の2人を病気や不注意でなくした両親にとっては、障害児でもとても大切に育ててくれました。  そのため岡盲に入学した時にまともに箸の持てない子供になっていました。  それを厳しくたしなめて矯正してくださったのが水戸先生でした。  その年は同盟休校まっただ中で、ちゃんと握れるまでは食卓から離れることはできませんでした。    藤田雅子先生〜入学した当時、1年に2組があることもその担任が藤田先生であったことも全く知りませんでしたが、2年生になり担任の先生が藤田先生だと分った時、周りの上級生達が「怖いぞ!」と言ったのです。  そして3年生も続けて受け持っていただいた先生は、まだ20代前半のお若い方でした。  人一倍好奇心の強い私にとっては本当に怖い先生でしたが、規律を守る授業には真面目に取り組むという気持ちを植えつけてくださいました。    新見先生〜私は岡盲高等部を卒業の後、大阪府立盲学校のピアノ調律科に進みました。  今から思えばとても大変な毎日でした。  調律科は音楽科の中にあって、ちなみに卒業証書には(調律科)の文字はないのです。  高校は普通科を卒業していなければ、その単位の不足分を補わなければならないとのこと。  午前中は普通科科目を中心にこなして、昼からはスクールバスの出る時間まで調律の技術の時間になっていました。  クラスメイトは3人、後の2人は邦楽科とピアノ科のどちらも女の子。  普通科の授業は3人で動きますが、音楽の科目は全部個人で動きます。  普通科の科目も英語のリーダーと 国語の現代文は普通科のクラスへ、数学と社会、化学は、理療科のA組へ、体育は別科のおじさんおばさん達という風に、校舎の端から端まで駆け回っていたのです。  先にあげた新見先生は普通科との合同授業で、現代国語を教えていただいていました。  50代半ば、間もなく定年を迎えられる感じで、小柄な女性、水前寺清子か中村玉緒のようなお声で、叱る時はとても大きな声が出ます。  勉強一途の普通科と音楽科とでは明らかにそのレベルには差が出ます。  そんな訳でいつも怒鳴られるのは音楽科ばかりでした。  私もその内の一人でしたが、ある時、ある文章の段落から次の段落(訳は10行ほど)までを読んで、その内容をその文章の中にある言葉を使って答えなさいと言う質問をされました。  影山(当時は酒本(さかもと))「あのう」 新見「あのうはいらん」 影山 「それは ・・ 」 新見 「それはも要らんのじゃ」 影山 「○○が○○なので」 新見 「違う。余分な言葉は、何も要らん。そこに書いてある一つの単語だけでいいんじゃ」 影山 「○○○○」 新見 「そうじゃそれでいいんじゃ」  それから先生は私に対して1度も大きな声を出されることはなく、とても優しく見守ってくださいました。  文章を読むとき、人の話を聞くときの1番大切なことを私の心の中に叩きこんでくださったのです。   次号に続く。 《 声 》 イスラームの世界 続編 1         センター利用者 小林 政利  イスラームの世界をレポートしたところ、貴重な情報や続編のリクエストが寄せられました。  思わぬ反響に驚いています。  コーランからはしばらく遠ざかっていたのですが、これを機にあらためてコーランを読んでみようという気になりました。  情報やリクエストを寄せてくださった方に厚くお礼申し上げます。  私がイスラム教の学習を始めたのはあまりにも謎の多い宗教だからです。  コーランの本文まで取り寄せて読んでみましたが、謎が解けたわけではありません。  かえって謎が深まったと言ってもいいでしょう。  最大の謎は、シャーマニズムの風土から忽然と現れた宗教がなぜ爆発的な広がりを見せたのかということです。  アラブの民を改宗させたのは武力による威圧が功を奏したのかもしれません。  しかし、北アフリカから東南アジア・中国にまで範囲が拡大した要因は何だったのか、簡単に結論を出すことはできません。  いまやイスラム教徒は全人類の5分の1、または4分の1と言われています。  人の心をひきつける魅力がなければこれほどの勢力にはならなかったでしょう。  では、その魅力とは何か?それは私には判りません。  空の高みに全知全能の神がいて、はるか下方に人間の群れがいて、人間はみな神との距離感が等しい点において平等であるといいますが、一方に絶対的な神がいる限り、人間の価値は相対的に低くなります。  人間は奴隷のように神に仕えなければならないとさえ言っています。  奴隷が主人に仕えることをアラビア語でイバーダといいます。  コーランでは人間が神に仕えることを、このイバーダという言葉で表わしています。  このような隷属的な関係は、私に限らずほとんどの日本人にとって理解しがたいのではないでしょうか。  イスラム教はやはり日本には縁遠い宗教なのかもしれません。  1回目の「イスラームの世界」では、豚肉やアルコールの禁止、一夫多妻などについてレポートしました。  今回はこれらのテーマについてもう少し詳しく書いてみたいと思います。  最後の審判の思想や原理主義・スンニー派とシーア派の違い、イスラム国などについても言及したいと思います。  コーランには「豚は穢れであるが」と端的に記されています。  豚以外の動物についても、偶像に捧げられたものや野獣にかみ殺されたもの、すでに死んでいるものなどは穢れているから食べてはならないとしています。  キーワードは「穢れ」です。  その源は旧約聖書にあります。  創世記・出エジプト記に続くレビ記には、穢れた動物が多数挙げられています。  ラクダ・狸・兎・猪など、蹄が分かれておらず反芻もしないものは穢れている。  魚もヒレやうろこのないものは穢れている。  爬虫類も穢れている。  昆虫もイナゴのほかは穢れているとしています。  鳥類では、とび・みみずくなど20種を挙げています。  コーランでは、ユダヤ人が神の怒りに触れたために多くの食物が禁じられたのだと揶揄しています。  つまり、われわれは神の怒りに触れていないので禁止食物も少ないのだとアピールしているのです。  イスラム教はユダヤ教やキリスト教よりスタートが遅れたために新参者の負い目がありました。  特にユダヤ教への負い目意識が強く、アッラーはアブラハムの神であると宣言したり、金曜日を安息日と定めて集団礼拝を義務付けたりしてユダヤ教に対抗しています。  アッラーはアブラハムの神、というのは、われわれはユダヤ人よりも先に神と契約を結んでいたという意味です。  金曜日を安息日にしたのは、ユダヤ教の安息日が土曜日に定められているからです。  神はわれわれに1日早く安息日を与えたもうたと言っているのです。  安息日は一神教の世界では重要な意義を持つならわしです。  それだけに、1日早めるだけで大きなインパクトがあったのでしょう。  アルコールの禁止についてはイスラム教の中でも議論が分かれているようです。  葡萄で作った酒・ハムルは禁止されているが、ナツメヤシで作った酒・ナビーズは許されていると主張する人々もいます。  もちろん少数派ですが。  (解説書には野外でナツメヤシの酒を飲む人々の写真が掲載されています)。  ムハンマドも酒が穢れているとは言っていません。  それどころか、天国には泥酔したり頭が痛くなったりしない美酒があると言っています。  日本の飲食業界は、味噌も醤油も発酵食品だから掟に触れるのではないかと気遣っていますが、それは考えすぎではないかと私は思います。    なお、酒は人間を怠け者にするという考え方もあるようです。  適量ならいいのですが、飲みすぎると二日酔いで仕事がおろそかになります。  また依存症になったり、体を壊したりして働けなくなることもあります。  アルコールの禁止は理にかなった掟なのかもしれません。  次は一夫多妻ですが、現代ではそうした伝統は有名無実になっていると聞いています。  一夫多妻を容認したのは、ウフドの戦い(625年)でメッカ軍に大敗した後のことです。  この時、多くの男たちが戦死しました。  残された妻や子供たちを救済するために妻を4人まで、持ってもよいとおすみつきを与えたのでしょう。  戦争のない時代になったら妻を一人にしなさいと言い遺せばよかったのですが、ムハンマドもそこまでは考えが及ばなかったようです。  その結果、男尊女卑の悪習慣と批判されるはめになりました。  その上に、女性はハレムに隔離しなければならないとか、ベールで顔を隠さなければならないなどの掟が加わってますます評判がよろしくありません。  しかし、コーランには女性を隔離せよとか、ベールで顔を隠せよなどの指示はありません。  「女性は慎み深く振る舞い、夫や子供などごく身近な者以外の者に自分の美しい身体をあらわに見せてはならない」と言っているだけです。  これなら日本人にも通じる常識です。  隔離とか、顔を隠す等の綻はコーランの読み違い、または曲解ということになります。  ベールについては、美人か不美人か見分けがつかないようにするためとの説もあるようです。  顔をあらわにすると結婚できない人が増え、少子化につながるという考え方もあるようです。  あるいは、砂漠の強烈な紫外線から顔を守るという意味があるのかもしれません。  コーランから切り離して、生活の知恵から生まれた掟とみなせばそれなりにうなずけます。  ですが、隔離して自由に外に出られなくするというのは男の身勝手というほかありません。  次号に続く 《 声 》 日本民謡をテクノ・ニューウェイヴテイストにアレンジしたサウンド センター利用者 小野田 清子  皆さんは、日本民謡をテクノ・ニューウェイヴテイストにアレンジしたサウンドで歌っている2人組のグループ「NeoBallad(ネオバラッド)」をご存知ですか?  私たち岡星寮の利用者は、このグループを毎月第3日曜日にボランティアとしてこられている方から紹介していただきました。  NeoBalladは、日本の音楽ユニット。  ドラマーで音楽プロデューサーの上領亘(かみりょうわたる)さんと幼少時に民謡全国大会で優勝の経歴を持つ福島県会津出身のシンガー、若狭さちさんによる二人組の民謡ユニットです。  そのNeoBalladの皆さんが、毎年行われている岡星寮祭りに、東京からはるばる岡星寮にきて、迫力のある演奏を聴かせてくださっています。  今年は岡星寮祭りの日にち(10月18日)と先方のスケジュールが合わなかったため、1週間早めて、11日にきてくださいました。  ここでは、岡山の下津井節(しもついぶし)・高橋のやとさ踊り・香川の金毘羅船々(こんぴらふねふね)・北海道のソーラン節などを演奏してくださいました。  また、私たちのリクエストにもこたえてくださいました。  私はこのグループの演奏を聴いたおかげで、少しですが民謡に興味をもちました。  そして、演奏終了後は一般のライブではなかなかできない握手や、ボーカルの若狭さんとお話をしたり、着物を触らせてもらったり、一緒に写真撮影をしました。  皆さんも、一度日本民謡をテクノ・ニューウェイヴテイストにアレンジしたサウンドを聴いてみてはいかがでしょうか。  イントロを聴いただけではわかりませんが、歌詞を聴けば「あー!この曲だ」と思い出せるはずのものがたくさんあります。  パソコンやスマホをお持ちの方は、youtubeにアクセスして、「NeoBallad」と検索するとヒットします。  それから、facebookのアカウントをお持ちの方は、若狭さんと上領(かみりょう)さんと友達になれますよ。 ◎目の不自由な方と家族の集い“どうしてますか交流会”  目が不自由になってこんな事が困った、何かいい方法ないかな。  いろんな悩みや思いを聞いたり話したりしてみませんか。  そんな思いで、集いの場“どうしてますか交流会”をほぼ毎月、開催しています。  目の不自由な方、ご家族の方々、お気軽にご参加ください。 記 1.日時 平成28年1月24日(日)午前10時〜12時           3月 6日(日)午前10時〜12時  ※4月26日(日)に岡山県視覚障害を考える会の講習会があります。   3月になりましたら、5月以降の日程表と共にご案内いたします。 2.会場 ひまわり福祉会館2階  岡山市北区大供2−4−25 電話 086−222−8619 3.対象 目の不自由な方と家族の方々 4.参加費 200円 5.申込み 不要 6.問合せ先 086−229−2225 (国末)まで   主催 岡山県視覚障害を考える会 《 新刊案内 》  センターで新しく受け入れた図書をご紹介します。  どうぞご利用ください。  今月は、デイジーが15タイトル、点字が6タイトルです。  なお、返却期限は資料が届いてからお手元に2週間です。  延長を希望される場合は、ご連絡をお願いいたします。 ●録音図書 ◎一般向け図書 〇総記(1タイトル) 書名 かなり聞きづらい疑問を調べてみた件。 KAWADE夢文庫 素朴な疑問探究会 編 デイジー 5時間14分 発行 河出書房新社 2015年 内容 自販機のボタンを、一度に全部押すとどうなる?長年の疑問を解決し、雑談の鉄板ネタが仕入れられる本。 〇哲学(1タイトル) 書名 面倒だから、しよう 渡辺 和子 著 デイジー 2時間37分 発行 幻冬舎 2013年 内容 ノートルダム清心学園理事長が、自分を見つめなおし、毎日をあたらしく、ていねいに生きるための言葉を紹介します。 〇社会科学(1タイトル) 書名 大事なことだけすぐにわかるマイナンバー制度 青木 丈 著 デイジー 1時間40分 発行 講談社 2015年 内容 いよいよ来年から始まるマイナンバー制度。全国民が関係する大きな制度改革を前に、素朴な疑問や不安に応える超入門書。 〇自然科学(4タイトル) 書名 消えるオス 昆虫の性をあやつる微生物の戦略 DOJIN選書 66 陰山 大輔 著 デイジー 5時間27分 佐藤 淑子 音訳 発行 化学同人 2015年 内容 役立たずのオスの抹殺、オスからメスへの性転換、交尾なしで子どもを産ませる…。昆虫の細胞に共生している細菌「ボルバキア」はなぜ宿主の性を操作するのか。 書名 本当にあった医学論文 倉原 優 著 デイジー 5時間 佐久間 恵子 音訳 発行 中外医学社 2014年 内容 「70年も心臓の中に残っていた弾丸」「床に落ちた食べ物は安全か?」「ハリー・ポッターの頭痛を真面目に診断してみた」など、実在する世界のトンデモ医学論文を紹介する。 書名 アゴをゆるめると健康になる! 肩こり・腰痛・疲れも吹き飛ぶ間質リンパの整え方 佐藤 青児 著 デイジー 2時間34分 発行 KADOKAWA 2014年 内容 アゴからはじまる筋肉の緊張が万病の元! 顎関節症を治す歯科医が、筋肉をゆるめることの重要性を伝え、肩こりや慢性疲労などを改善するリンパケアを紹介する。 書名 本当に怖い!薬物依存がわかる本 西 勝英 著 デイジー 8時間26分 江本 幸子 音訳 発行 西村書店 2014年 内容 どうして「くすり」に魅せられる? 医師処方薬なら大丈夫? 大麻、コカイン、覚せい剤、脱法ハーブから処方薬、タバコ、アルコールまで依存性、作用・副作用をわかりやすく解説する。 〇文学(8タイトル) 書名 ちゃんぽん食べたかっ! さだ まさし 著 デイジー 11時間46分 発行 NHK出版 2015年 内容 中1で上京して以後、様々なことを経験しながら成長した「僕」は、幾度もの挫折の末、帰郷し…。「グレープ」に至るまでの9年間を綴った自伝的青春小説。 書名 魔王 伊坂 幸太郎 著 デイジー 8時間47分 発行 講談社 2005年 内容 不思議な力を身につけた男が、大衆を扇動する政治家と対決する「魔王」と、静謐な感動をよぶ「呼吸」。ある兄弟の孤独な戦いを描く。 書名 スクラップ・アンド・ビルド 羽田 圭介 著 デイジー 3時間21分 発行 文藝春秋 2015年 内容 「早う死にたか」毎日のようにぼやく祖父の願いをかなえてあげようと、ともに暮らす孫の健斗は、ある計画を思いつく。 書名 湖底の城 呉越春秋 6巻 宮城谷 昌光 著 デイジー 6時間9分 福島 五重 音訳 発行 講談社 2015年 内容 呉軍と楚軍は正対し、一進一退の戦いを続ける。中国戦史上、特記される戦いの行方は。知られざる、古代中国の血湧き肉躍る物語。 書名 小説土佐堀川 女性実業家・広岡浅子の生涯 古川 智映子 著 デイジー 7時間59分 発行 潮出版社 1989年 内容 近代日本の夜明けに「おんなの時代」を先どりしたスーパーレディがいた。銀行、鉱山を事業の柱に据え、日本女子大学、大同生命の創立にもかかわった、さっそうたる女性の一代記。 書名 民王 池井戸 潤 著 デイジー 9時間17分 発行 ポプラ社 2010年 内容 ある日突然、首相・武藤泰山と、武藤の大学生のドラ息子・翔の中身が入れ替わってしまう。原因もわからないまま、やむなく泰山の変わり身となって国会に出ることになった翔。本物の大人とは、国を動かす政治とは何か。  書名 火花 又吉 直樹 著 デイジー 4時間47分 発行 文芸春秋 2015年 内容 奇想の天才である一方で人間味溢れる神谷、彼を師と慕う後輩徳永。芸人の2人が運命のように出会ってから劇は始まった。 書名 Nのために 湊 かなえ 著 デイジー 7時間7分 発行 東京創元社 2010年 内容 瀬戸内の島の東屋で、ビルの窓掃除のゴンドラの上で、古いアパートの一室で、わたしは「N」を守ることを決意した…。 ●点字図書 ◎一般向け図書 〇社会科学(3タイトル) 書名 行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律 点字2巻 発行 総務省法令データ提供システム 2014年 内容 個人番号及び法人番号を活用した効率的な情報の管理、利用及び迅速な情報の授受、手続の簡素化による国民の負担の軽減等を目的とした法律。 書名 特定商取引に関する法律 点字2巻 発行 総務省法令データ提供システム 2014年 内容 特定商取引を公正にし、損害の防止を図ることにより、購入者等の利益を保護し、国民経済の健全な発展に寄与することを目的とした法律。 書名 幸せな職場のつくり方 障がい者雇用で輝く52の物語 坂本 光司、坂本光司研究室 著 点字4巻 発行 ラグーナ出版 2014年 内容 障がい者雇用に尽力している企業52社のエピソードを紹介し、地域や医療保健福祉と連携し、業績を上げながら障がい者雇用を成功させたコツを呈示する。 〇産業(1タイトル) 書名 カウンターの中から見えた「出世酒」の法則 仕事が出来る男は、なぜマティーニでなくダイキリを頼むか 講談社+α新書 古沢 孝之 著 点字3巻 太田 真紀 点訳 発行 講談社 2012年 内容 酒の席のマナーから、仕事で使える「シチュエーション・カクテル」まで。バーテンダーであり、ホテルマンであり、サラリーマンである著者が、出世する人の酒の飲み方を「出世酒の法則」として紹介する。 〇文学(1タイトル) 書名 パリの酒場伝説 神山 宏 著 点字5巻 下川 恵美子 点訳 発行 審美社 2004年 内容 伯爵・神山宏は、ベル・エポックの若き芸術家の夢を追い、夜の帷が降りると、カルチェ・ラタンのカフェに出没し、あるいはまたセーヌ河を渡ってモンマルトルのキャバレーをさまよっていた。 ◎児童向け図書 〇絵本(1タイトル) 書名 ミルクこぼしちゃだめよ! スティーヴン・デイヴィーズ 文 クリストファー・コー 絵 福本 友美子 訳 点字1巻 発行 ほるぷ出版 2013年 内容 山にいるお父さんにミルクを届けることにしたペンダ。頭の上におわんをのせて、砂丘をとおって、川をわたって…。小さな女の子の冒険を、ユーモア、愛情たっぷりに描いた絵本。