視覚障害者センターだより 〜ロバと五つのにんじん〜 平成27年10月(通巻301号) 発行 岡山県視覚障害者センター 郵便番号 700−0927 岡山市北区西古松268−1 電話 086−244−1121 FAX 086−244−1043 Eメール ossfc@nifty.Com 声の欄は随時募集しています。 内容とその形式は問いませんが、ワープロやエディタのデータ、あるいはメールが可能な方は、これらでいただければ大変助かります。 皆さまからの原稿をお待ちしています。 読み始めたら途中でやめられなかった面白い本、おいしかった飲食店、便利グッズ、趣味など何でもけっこうですので、ぜひ声の欄に原稿をお寄せください。 センター便りは、先月号からほぼ同文のものをセンターの点訳・音訳奉仕員に配布しています。 「声」欄の内容を奉仕員にもお届けすることになりますので、ご了承ください。 今月の内容  お知らせ(5件) ・メンタルマップの紹介 ・金融機関に視覚障がい者の立場で望むことがありますか ・目の不自由な方と家族の集い“どうしてますか交流会”のご案内 ・見え方に不自由を感じていらっしゃる方とご家族のみなさまへ 「被災してしまったら」 ・声 小林 政利さんから「三位一体論と創世記」最終回  ・声 影山 智雄さんから「続原尾島キッド」 1  ・「厚生労働大臣免許保有証」(携帯カード)の交付申請について 新刊案内を お伝えします。 《 お知らせ 》 1.2015年11月の休館日と図書整理日   休館日は毎週火曜日と4日(水)文化の日の振替休日、23日(月)勤労感謝の日です。   図書整理日は26日の第4木曜日です。   この日は終日留守番電話対応とさせていただきます。 2.初心者対象音声パソコン講座のご案内   今年度も当センターの登録者を対象にした音声パソコン初心者講座を実施します。   今年からは、受講される方の時間に合わせる形式のみとします。   原則4日間、1日3時間、延べ12時間の講座になります。   センターの開館時間が9時〜17時のため、最も遅い場合でも、17時には終了します。   以前受講された方も、もう少しスキルアップを目指す方でも、その内容によっては対応が可能かもしれません。   講座を受けてみようと思われる方は、希望する4日間をお知らせください。   講師の都合のため、日時を変更していただくこともあります。 3.点字に親しむ会のお知らせ   2015年度の「点字に親しむ会」を次のように開催いたします。   例年通り点字に関するゲーム・クイズ・読みの問題等で2時間余りを楽しみたいと思います。   点字のルールに自信のない方も、お気軽にご参加ください。   なお、参加された方には、ささやかですが昼食を差し上げます。 とき 11月22日午前10時〜12時 電話 086−244−1121 場所 岡山県視覚障害者センター 参加申し込み 11月19日(木)までに、電話で視覚障害者センターまでお申し込みください。 4.秋の歌声     11月29日午後1時半より視覚障害者センターで、例年通り「秋の歌声」の集りを持ちたいと思います。   さわやかな秋の午後、アコーディオンとギターをバックに思いきり歌って過ごしましょう。   前もっての申し込みは不要です。   昨年から新しい歌集も加わっています。 5.今月号でも再度日本盲人社会福祉施設協議会が、新しく開設した同行援護専門の事業所「日盲社協レッツゴー事業所」のご案内をさせていただきます。   この日盲社協レッツゴー事業所は、視覚に障害をお持ちの方が、地方から東京へ、または東京から地方へ行かれる際に利用されると便利な同行援護サービスを行っています。   東京23区内などを、経験豊かなスタッフがガイドヘルパーしてくれます。      たとえば、大阪にお住まいの方が利用される例をご紹介しましょう。   東京での行事に大阪から出かけたい場合、自宅から駅までの間は、地元の同行援護事業所のガイドヘルパーにより、駅ではJRの職員により、そして東京駅からは当事業所のガイドヘルパーが同行援護を行います。     日盲社協レッツゴー事業所の受付は、月曜日から金曜日までです。   祝日と12月29日から1月3日まではお休みです。   営業時間は午前9時から午後5時まで。   サービス提供日は原則として年中無休。   サービス提供時間は原則として午前7時から午後9時までとなっています。   お問い合わせやお申込みは、日盲社協レッツゴー事業所の高橋さんもしくは菅原さんが担当されています。   電話03−6240−1714、(FAX)03−6240−1724です。 ◇メンタルマップの紹介  視覚に重度の障がいがあって困ることには、情報入手と移動の困難があります。  情報入手に関しては、音声パソコン、サピエ図書館などを利用すれば、様々な情報を選択する時代となりました。  しかし移動の自由度は情報入手に比べるとどうでしょうか。  白杖・盲導犬を利用し単独歩行されておられる方は、各自がメンタルマップ(頭の地図)を描き、様々なランドマークで確認し、移動していると思います。  「岡山県視覚障害者センター」では、皆様がメンタルマップを作るのに役立つ「岡山県下の主要部分」のデータ作りに2013年4月から取り組み、ようやくいくつか公開できるようになりました。  サピエ図書館に完成したものから順次登録していきます。  登録するデータ形式は、点字・音声デイジー・テキストデイジーです。  これらを何度も読み返し、メンタルマップが作れれば、移動の自由がかなり獲得できます。  ふるってご活用ください。  サピエ図書館からの入手が困難な方で、 点字印刷物、 音声デイジー、 テキストデイジー、 点字データ、 テキストデータ(word版)が必要な方はお知らせください。   データの中には店名など多くの固有名詞が出てきます。   これらは、しばしば変わるため、今後定期的に中身をチェックし、データを更新していく予定にしています。 ◇金融機関に視覚障がい者の立場で望むことがありますか。  岡山県視覚障害者センターに登録されておられる皆様へ。  センター所長の川田です。  11月18日午後、トマト銀行本店で、高齢者・視覚障がい者の方に配慮した接客のために「読み書き(代読・代筆)情報支援について考える研修会」が開催されます。  この研修会では、高齢者や視覚障がい者の「読み書き」に対する現状と「読書権保障」について理解いただき、高齢者や視覚障がい者からはどのようなサービスが望まれているか、視覚障がいの方に配慮したサービスをどう導入していくべきかを考えていくとのことです。  当日視覚障がい者の立場で話すチャンスを設けていただけました。  せっかくのチャンスです。  皆さん日頃銀行・信用金庫、郵便局、その他の金融機関をご利用され、以下に関することは問題なくできたでしょうか。  困ったこと、改善して欲しいなと感じたことはなかったでしょうか。  ふるって皆さん体験談や要望を電話やメールなどでお寄せください。 電話 086ー244ー1121 email ossfc@nifty.com ◎目の不自由な方と家族の集い“どうしてますか交流会”  目が不自由になってこんな事が困った、何かいい方法ないかな。  いろんな悩みや思いを聞いたり話したりしてみませんか。  そんな思いで、集いの場“どうしてますか交流会”をほぼ毎月、開催しています。  目の不自由な方、ご家族の方々、お気軽にご参加ください。  1.期日 11月15日(日)音楽忘年会 綿の実 ほほえみコンサート 梶谷福祉基金による視覚障害者の手作りコンサート 日時:平成27年11月15日(日)10:00〜14:00(開場9:30) 会場:ライブハウス「マイ・ソア・モア」 岡山市北区表町3丁目5−23 【電話】 086−234−0349 会費:1000円(お弁当・お茶代込み、ビール500円別途) お申込・お問い合わせは10月20日までに下記へご連絡ください 【電話】神垣(かみがき) 10:00〜16:00 (自宅) 086−273−2860 (携帯) 090−2002−1781 プログラム 開会のあいさつ OTTOバンド From三木市※1  10:00〜11:00 休憩 11:00〜11:15 サキソフォンクロス※2  11:15〜12:00 お昼休憩 12:00〜12:40 マイ・ソア・モア演奏及び全員による歌声 12:40〜14:00  「マイ・ソア・モア」の演奏と全員での歌唱 ※1 視覚障害者を含む5名のアマミュージシャン&盲導犬。    障害の有無・年齢に関わらず笑顔あふれるカフェを作りました。        メンバー皆で岡山へ行くことを楽しみにしています。 ※2 2010年バンド結成。広島・岡山を拠点として活動する4人組。 ※ このコンサートはライブハウス「マイ・ソア・モア」様の多大なるご厚意により行われます。 平成28年       1月24日(日)午前10時〜12時       3月 6日(日)午前10時〜12時  ※4月26日(日)に岡山県視覚障害を考える会の講習会があります。3月になりましたら、5月以降の日程表と共にご案内いたします  2.会場 ひまわり福祉会館2階  岡山市大供2−4−25 電話 086−222−8619  3.対象 目の不自由な方と家族の方々  4.参加費 200円  5.申込み 不要  6.問合せ先 086−229−2225 (国末)まで  主催 岡山県視覚障害を考える会 ◇見え方に不自由を感じていらっしゃる方とご家族のみなさまへ 「被災してしまったら」 日本ロービジョン学会(このリーフレットは日本ロービジョン学会のホームページからダウンロードできます。)  災害直後は、だれでも余裕のない状況ですが、困っている人にはできるだけ手助けをしようという共助の精神は健在です。  勇気を出して、必要な時には周囲の方に相談しましょう。  【避難所で過ごす場合】   1.眼が不自由であることを周囲の方に知らせましょう。     避難所では、寝ている人のすき間を歩かなくてはならなかったり、慣れない仮設トイレを使わなくてはならなかったり、壁に掲示された大事な連絡が見えなかったりと、たくさんの困難が予想されます。     周囲の人に事情をお話しして手伝ってもらうことが必要になります。     特に、「少しは見えているが不自由」という人のことは健常者には理解しにくく「本当は 見えているくせに」という誤解を受けがちです。     くり返し眼の状況を説明しなくてはならないこともあります。     あらかじめ想定しておきましょう。     白杖を携帯することは目が不自由なことを示すサインとして有用です。   2.避難所の管理者にも眼が不自由であることを連絡しましょう。     要援護者登録の有無も伝えましょう。      (要援護者の安否が確認できないと、自治体で不要な捜索活動を続けることになる可能性があります。)      眼が不自由なことを他人に知られたくないという方も少なくありません。     家族や親しい知人らと一緒に避難していて、十分に介助してもらえるのであれば無理に周囲に知らせる必要はありませんが、支援活動として、視覚に障害のある方に役立つ物資や サービスの提供が行われることがありますので、そうしたサービスを利用するためには避難所の管理者には存在を知らせておくことをお勧めします。     障害に配慮した「福祉避難所」の利用が可能かどうかを自治体に確認してみましょう。   3.避難所生活でどのような配慮をしてもらいたいかを具体的に伝えましょう。     例:見えにくいため避難所内での移動が難しい → 出入り口に近く、トイレに行きやすいスペースに居させてほしい。仮設トイレが遠い場合は誘導してほしい。     例:白杖をつかないと歩けない → 配給を受け取る際には手伝ってほしい。     例:掲示物が読めない → 新しい情報があったら口頭で知らせてほしい。眼鏡や拡大鏡の提供情報があれば知りたい。   4.当事者団体や点字図書館などに登録している方は、登録団体に連絡をとり、安否情報や困っていることなどを伝えましょう。     支援を受けやすくなります。避難先を移動するごとに必ず連絡をとりましょう。  【やむを得ず被災した自宅に避難をする場合】   1.晴眼者(視覚に障害のない人)に安全上の問題を確認してもらいましょう。     建物の崩壊の恐れなど、危険がある場合には自宅避難はできません。   2.食料・水・簡易トイレなどの確認     食料・水・簡易トイレなどの備蓄があるかを確認します。     自宅避難では支援物資や支援情報が手に入らなくなってしまうことがあります。     できるだけきちんと支援してもらえるよう、避難所や自治体にきちんと状況を説明しておくとよいでしょう。     また給水場所や支援物資の配給場所なども確認しましょう。   3.非常時の連絡手段の確認     電話や自治体無線など、支援者との連絡手段をかならず確保しておきましょう。   4.自宅に避難していることを連絡しましょう。     自治体・避難所・親類や支援者に自宅にいることを必ず連絡しておきましょう。 《 声 》 三位一体論と創世記 最終回         センター利用者  小林 政利  神と人の間に少しの隔たりもないことが創世記の言葉から証明されました。  創世記は秘密の宝庫です。  アダムとエバは最初の人類とされていますが、ここにも秘密が隠されています。  これからその秘密を読み解いてみたいと思います。  アダムとエバの間には二人の息子が生まれます。  兄の名はカイン、弟の名はアベルといいます。  カインは成長して地を耕す者となり、アベルは羊を飼う者となります。    ある時、カインは畑の作物を、アベルは子羊を、それぞれ神に捧げます。  神はアベルの捧物を祝福し、カインの捧物には目を留めませんでした。  カインは妬みの心を起こし、アベルを野原に誘い出して殺してしまいます。  このことに怒った神は、罰としてカインを追放します。  カインは神に語りかけます。  「私の罪は重すぎて負いきれません。  地上をさまよえば、私に出会う者は誰であれ私を殺すでしょう。」神は答えます。  「カインを殺す者は誰であれ7倍の復讐を受けるであろう」と。  そして、誰にも殺されないようにカインに印をつけます。    ここまでの記事には、誰もが違和感を覚えると思います。  なぜ神はアベルの捧物だけを祝福したのか。  なぜカインはその程度のことでアベルを殺したのか。  なぜ神は大罪を犯したカインを守るのか。  首を傾げたくなりますが、そこに目を奪われると肝心なものが見えなくなります。  神とカインの会話は、すでに多くの人がいたことを明かしています。    やがてカインは移り住んだ土地で町を建て、妻を迎えたと記されています。  すでに多くの人がいたことがここで決定的になります。  多くの人がいたとすると、あちらこちらに町や集落があったでしょうし、カインが新たに町を建てたとしても不思議ではありません。  このロジックから一つの結論が得られます。  アダムとエバは最初の人類ではありません。  もっと前から、はるかな昔から人はいたのです。    では、二人はいったい何者でしょう。  答えはもう出ています。  二人は実在の人物ではありません。  命の尊厳を謳いあげるための架空モデルだったのです。  土の塵から男を作った、肋骨を1本取って女を作った、などの比ゆ的な表現は実在の人物ではないことを暗示しています。    さて、アダムとエバが最初の人類でないとすると、本当の最初の人類は、いつ、何から生まれたのでしょう。  その答えを創世記に見出すことはできません。  しかし、そこに進化論を取り入れるとまったく新しい世界が見えてきます。  たとえば、ノアの箱船に恐竜が乗っていなかった理由もあっさり説明がつきます。  創世記は進化論を念頭において書かれたものではありませんが、比ゆ的手法を用いることで解釈に幅を持たせています。    創世記にはほかにも秘密が隠されています。    人は禁断の木の実を食べた時から死ぬようになったとされています。  裏を返せば、永遠に死なないように作られていたということになります。  およそ荒唐無稽な話です。  実は、エデンの園には善悪を知る木の実のほかに、もう一つ禁断の木の実がありました。  命の木の実です。  これを食べると永遠に死なないとされていました。  奇妙です。  二人が永遠に死なないように作られたとすると、命の木の実など必要ないはずです。  必要のない物がなぜあったのか、ここにヒントがあります。  神は二人が善悪を知る木の実を食べるのを黙って見ていました。    しかし、命の木の実を食べることは許しませんでした。  命の木の実は手の届く所にありそうで、絶対に食べることのできない幻の木の実です。  このくだりは、人には寿命があることを逆説的に明かしていると解釈することができます。  この解釈を裏付ける記事もあります。  「神は神の形に人を創造された」という言葉に続いて、「男と女に創造された。生めよ増えよ、地に満ちて地を従わせよ」とあります。    永遠に死なない人類が、永遠に増え続けたら、文字通り地上は人で溢れかえってしまいます。  荒唐無稽と言うほかありません。  やはり人は必ず死ぬように定められているのです。    また、人は木の実を食べた罰として、働いて食べ物を得なければならなくなったとされていますが、ここも言葉通りに読むことはできません。  なぜなら、健康な人が食べ物を得るために働くのは当然のことだからです。    このように、創世記にはあい反する二つの顔があります。  旧約の時代から近代まで、御伽噺のような記事がおもての顔とされてきました。  これからの時代は、言葉の裏に隠されたもう一つの顔がおもてになるでしょう。  表と裏を逆にする場合、大きな痛みを伴うかもしれません。  しかし、創世記には痛みに耐えるだけの底力があります。    ながながと書いてきましたが、この連載のテーマはただ一つです。  すべての人類に神性(神の性質)を認める新しい三位一体論も、創世記のアダムとエバの物語も、共に命の尊厳を謳いあげています。  人はもう神のしもべではありません。  人はすなわち神です。  人の命に最大の価値を置く宗教こそ、これからの時代に必要な宗教です。(おわり) 《 声 》 続原尾島キッド 1       センター利用者 影山 智雄  美空ひばりのほぼデビュー曲ともいえる「東京キッド」。 これにあやかってというには少しおこがましいのですが、岡山盲が一番飛躍し始める時期、僕もその頃に入学したというこの出会いを(キッド)に重ねて少しばかり昔話をしてみたいと思います。  また、(キッド)はその歌詞の通り、粋でオシャレでハンサムでしたが、今回お話する内容はその後半に深い意味を込めているのです。  まず昭和27年2月16日、岡山盲学校は新天地原尾島での出発をしたのです。 はからずも今年は元号が異なるだけの同じ年、岡盲再スタートから63年目、その頃小学2年生から3年生だった私(キッズ)の心と体を通して感じていた小さな思い出です。  東京キッドの後半には、 〜右のポッケにゃ夢がある 左のポッケにゃチューインガム 空を見たけりゃビルの屋根 もぐりたくなりゃマンホール〜 とありますが、この4行の詞を土台としてお話を進めていきたいと思います。 ただしこの順序は不同とさせていただきます。   1.もぐりたくなりゃ(校内の暗渠)  昭和27年2月16日、その日は穏やかな天気ではあったのですが、大元では消えていた雪も原尾島ではうっすらと道の上に残っていました。  校内に入ると奥に向かってスクールバスが通れるほどの広い未舗装の道が延びていて、通称三角池に続いていました。  その右側はかなり整備された運動場、左側には手前に寄宿舎の建物が、奥側には少し細い道をはさんで、校舎がその敷地の割には閑散と建っていました。  まず寄宿舎ですが、かなり古びた外観の、こげ茶色になった板張りの2階建てで、ここは女子寮となりました。  広さは12畳あるいは18畳のかなり広い部屋が1・2階それぞれ2部屋ずつで、下の2部屋は食事時になると食堂に早変わりするのです。  他に集会などの会場に使っていました。  元々は洋室として作られていたらしく、南側に面した窓は少し腰高で風通しは悪かったのではないかと思いました。  この建物の名は(暁寮)といい、昭和34年までは使われていました。  暁寮の前を通り過ぎて東の端にある入口に着くと、コンクリートで舗装された屋根付きの通路がありました。  その通路を左に行くと暁寮に入り、右に進むと炊事場に繋がっていました。  とても暗くてじめじめしていましたが、この炊事場で毎日60人程の食事が作られていたのです。  その通路を越えて暁寮を回り込むように左へ行くと、別建物の一軒家があり、炊事の先生や、ある時には入りきれない年長の女子の部屋などに利用されていました。  通路を越えて炊事場に沿って奥へ進むと、風呂場になります。  これはきわめて一般的な五右衛門風呂で、一度に3人ずつ位しか入ることができませんでした。  暁寮の南側には少し広場があり、その南側には12畳ほどの広さの木造の建物がありました。  最初の頃は舎監室として使われていたようですが、それよりも我々子供の遊び場になっていた記憶の方が強いのです。  部屋の中は半分が板場で残りは畳の部屋、仕切りの建具も机などの備品もない、まるで温室を想像させるようにほとんど全部がガラス張りになっていて、秋の終りから冬にかけてそこに入っていると寒さをしのぐことができました。  この部屋には住人、いや犬がいました。  寄宿舎で飼っていたのか、住みついていたのか(はち)とやら、雑種の雌犬でした。  はちはそこで何度か出産もし、我等のよきパートナーでもあったのです。  しかし突然舎監室は消えてしまい、その跡には池だったか花壇だったかができたとか。  この辺になると少し確信はありません。  暁寮の北側には竹藪があり、その西側にはとてもきれいなテニスコートがありました。  まるでコテでもあててならされたような、平らで土の細かな地面の上で毎朝ラジオ体操をするのも日課の一つだったのです。  昭和27年、引っ越した当時は新築の建物が2棟ありました。  盲学校の校門は北の端で、三角池は南の端、運動場は西で校舎や寄宿舎の建物は東側にありました。  暁寮と舎監室の間に挟まれるように一棟の建物があり、これを「朝日寮」といいました。  そして舎監室の南側にもう一棟「平和寮」と呼ばれる、どちらも新築木造モルタル塗りの平屋建てが出来上がっていたのです。  さて、盲学校の校内の真ん中を突き切る道路には、所々マンホールの蓋があって水の流れる音もしていました。  なんとこの下は暗渠だったのです。  新しい場所に移転して、僕達昔のキッズは、何でもかんでも手当たり次第遊びにすることで夢中になっていたのでした。  ある日の午後、私は1年後輩のS君を誘って、三角池に行きました。  小さな石段が3段ほど続いています。  2段目まで降りると、次は少し広くなっていて、もうその向こうは池の中に入ってしまいます。  周りを観察すると、北へ向かって小さなトンネルがあります。  そこで二人は中に入ることにし、そこは言うまでもなく道の下を流れる暗渠でした。  作られてあまり間がないのか、川の底は意外ときれいにコンクリートで舗装されていましたし、子供にとってはあまり狭いとは感じられませんでした。  S君を先に行かせてどんどん進みます。  マンホールの下に来ると、光も差し込んできます。  右側の壁の方から時々排水も流れてきます。  どれ位時間が経ったでしょうか、急に水の音がして前が明るくなって、風も吹いてきました。  「やった」完走したのです。  校門の前の道を挟んで、行司さんというお百姓さんのお家がありました。  その田んぼの傍に小さな池があったのですが、この用水路の出口はここにあったのです。  〜もぐりたくなりゃ岡盲の暗渠〜  でもこの暗渠には2度ともぐることはありませんでした。  それは三角池がどんどん汚れてきて、見るからに水が汚くなったからです。  次号に続く ◇「厚生労働大臣免許保有証」(携帯カード)の交付申請について  各都道府県団体(本県は、岡山県視覚障害者協会)が窓口となり、あはき等法推進協議会加盟団体より(公財)東洋療法研修試験財団に申請し、発行されます。  交付申請手続きは (1)各都道府県団体から取り寄せた申請書に記載された内容を確認し、記入(間違いがあれば赤ペンで修正)して、申請(提出)して下さい。   携帯免許の返信用封筒を用意し(長形3号)簡易書留用392円切手を貼り、申請者の住所・氏名を記入。 (2)顔写真 (パスポート用サイズ 縦4.5p×横3.5p)2枚(2カ所)貼付下さい。 正面、無帽、無背景でフチなし、写真裏面に氏名を記入のこと。 (3)住民票(本籍のあるもの) (4)免許証(写し、A4サイズ) (5)写真付の身分証明証(写し)[身体障害者手帳・運転免許証・パスポート等] (6)事務手数料は、申請時に、会員:2,000円、非会員:4,000円)を所定の振込用紙にて納入して下さい。    受付締切は、平成27年11月10日(厳守)  発行日は、平成28年3月(予定) (5年毎の更新となります)  なお、あはき免許所持者で、中央の業団へ加入されている方は、本県各業団窓口で申請をお願いいたします。  また、業団未加入の方で、免許保有証(携帯カード)が必要な方は、本会登録会員につきましては、本会事務局で申請を受け付けます。  問い合わせ先:社会福祉法人岡山県視覚障害者協会      電話:086−271−0933 《 新刊案内 》  センターで新しく受け入れた図書をご紹介します。  どうぞご利用ください。  今月は、デイジーが5タイトル、点字が3タイトルです。  なお、返却期限は資料が届いてからお手元に2週間です。  延長を希望される場合は、ご連絡をお願いいたします。 ●録音図書 ◎一般向け図書 〇歴史(1タイトル) 書名 生きて帰ってきた男 ある日本兵の戦争と戦後 岩波新書 新赤版 1549 小熊 英二 著 デイジー 11時間43分 塩田 美智恵 音訳 発行 岩波書店 2015年 内容 とある一人のシベリア抑留者がたどった軌跡から、戦前・戦中・戦後の日本の生活模様がよみがえる。戦争とは、平和とは、いったい何だったのか。著者が自らの父・謙二の人生を通して、「生きられた20世紀の歴史」を描き出す。 〇社会科学(1タイトル) 書名 それでも「日本は死なない」これだけの理由 なぜ欧米にできないことができるのか 増田 悦佐 著 デイジー 8時間1分 佐藤 美智子 音訳 発行 講談社 2011年 内容 モラルに優れた一般民衆、世界一の製造業、消費者のための健全な競争市場…。大震災という悲劇が教えてくれた「日本」の本当の実力とは? データを愚直に読み解き、メディアのウソを明らかにする。 〇自然科学(1タイトル) 書名 おしゃべり科学 ひと晩で理系になれる最先端科学講義集 奥本 素子 著 デイジー 6時間29分 辻田 峯夫 音訳 発行 カンゼン 2014年 内容 現代病は、太古のDNAのしわざ?虫は防虫剤でヤケドする?メダカは幼なじみに恋をする?進化生理学、分子細胞生理学、行動生物学など、9名の研究者が平易な言葉で語った最先端科学講義集。 〇文学(2タイトル) 書名 今日から俳句 はじめの一歩から上達まで NHK俳句 片山 由美子 著 デイジー 4時間49分 西田 美千代 音訳 発行 NHK出版 2012年 内容 俳句の一歩を踏み出す人、もう一度本格的に学び直す人に向けて、俳句を作るための基本と鑑賞のポイントを、芭蕉の時代から現代までのすぐれた作品にそって解説します。 書名 化け芭蕉 縁切り塚の怪 角川文庫 瀬川 貴次 著 デイジー 5時間20分 塩田 美智恵 音訳 発行 KADOKAWA 2015年 内容 藤堂家の使用人・松尾宗房(芭蕉)は奇妙な老人に絡まれる。怪異から宗房を助けたのは眼光鋭い美青年・河合惣五郎(曾良)。俳諧を通じ、意気投合したふたりは、藤堂家に続く不幸の原因解明に乗り出す…。怪異ミステリ。 ●点字図書 ◎一般向け図書 〇総記(1タイトル) 書名 あなたの知らない都市伝説の真実 だまされるな!あのウワサの真相はこれだ! 皆神 竜太郎 著 点字 3巻 難波 美佐子 点訳 発行 学研パブリッシング 2014年 内容 信じる・信じないの前にまずは真実を知るべし! 世界支配を目論むフリーメイソン、アメリカで起こった「宇宙戦争」、“アフロの聖者”サイババの正体、ノストラダムスの大予言、恐るべき地震兵器などについて解説する。 〇哲学(1タイトル) 書名 子は親を救うために「心の病」になる ちくま文庫 高橋 和巳 著 点字 3巻 山上 方子 点訳 発行 筑摩書房 2014年 内容 子どもは親が大好きで、自分は役に立っているか、必要とされているかと考えている。だが思春期になり、親から逃れようとする心と、従おうとする心の葛藤に悩み、心の病になってしまう。精神科医が、親と子の真実を解き明かす。 〇文学(1タイトル) 書名 江戸川乱歩に愛をこめて 光文社文庫 ミステリー文学資料館 編 芦辺 拓 ほか著 点字 5巻 藤原 美雪 点訳 発行 光文社 2011年 内容 日本のミステリーの始祖として、偉大な業績を遺し、いまなお燦然と輝きつづける巨星・江戸川乱歩。そんな先達を敬愛する当代の人気作家たちによる“乱歩小説”を集めた傑作アンソロジー。