岡星寮 令和7年度事業計画 1:基本方針   障害のある人もない人も地域で一緒に普通に暮らしていけるのが本来あるべき社会の姿であり、障害者支援施設である岡星寮においても、利用者が可能な限り家庭や地域で暮らしているのと同じような生活を営めるよう支援する。施設を家庭や地域と対立的に捉えることは誤りであり、岡星寮は「利用者全員の大きな家」を目指す。   そのため、生活支援員をはじめ全職員が一丸となって、利用者本位・自立支援に向けた福祉サービスのあり方を常に問い直し、より良いサービスを提供できるよう職員の研修や自己研鑽を支援するなど、人材の確保・育成に取り組み、職員がプロ意識と誇りを持って働ける就労環境を整備する。   また、サービスの提供が惰性に流れ、あるいは独善に陥ることがないよう、施設を広く地域に開放し、家族会はもとより、ボランティアや実習生など外部の意見に謙虚に耳を傾ける。 2:重点事項   上記の基本方針を踏まえつつ、令和6年度においては、次の6項目を重点事項として施設運営に取り組む。 (1)虐待や不適切な支援の根絶   およそ全ての利用者は人格を持った主体として尊重されなければならない。そうである以上、利用者への虐待はもとより、不適切な支援があってはならないのは当然のことであり、令和4・5年度になされた通報を受けて進めている改善への取組を引き続き着実に実施していく必要がある。   虐待や不適切な支援が行われるのは、職員個々人の人権感覚の鈍さや利用者に対する敬意の欠如、支援に係る専門的知識・技術の体系的な習得が十分でない点に起因するほか、職場の就労環境や職員の心理的安全性の確保にも問題があると考えられる。   このような観点から、令和7年度においては、引き続き職員の専門的知識・技術の習得と職業意識の向上を図るとともに、年齢・性別やキャリアに関わらず自由に発言でき、問題があれば互いに助け合いフォローし合える職場環境の整備を進める。 (2)利用者本位のサービス提供   利用者は自らの選択に基づいて人生を歩む主体であり、利用者の支援は自己決定の尊重の下になされなければならない。   そこで、利用者が主体的に社会経済活動を営めるよう、何よりも利用者の意向を尊重し、真に一人ひとりの状態に即した個別支援計画を作成するとともに、適時見直しを行い、これに基づいて、変化と潤いのある日常生活を送れるようなサービスの提供に努める。  特に、お花見やスイカ割り、かき氷や焼き芋会など、四季折々の季節を感じられる行事を積極的に実施するほか、クラブ活動や外出支援も漫然・画一的なものとならないよう工夫して行う。また、日帰り旅行や寮祭などの大規模な行事についても、ご家族やボランティアの方々の協力を仰ぎながら、できるだけ賑やかに実施する。  施設の前面道路に音響式信号機が設置され、安全に横断できるようになったことを受けて、竜之口スポーツ広場公園までの歩行や運動により、健康と身体機能の維持増進を図る。  食事についても、食材費や光熱費の異常な高騰が続いているが、献立に工夫を凝らし、単に摂取カロリーや栄養バランスが取れているだけでなく、寛いだ雰囲気の中で、食べて美味しく楽しめる家庭的な料理を提供するよう努める。  なお、利用者への虐待や要件を充たさない身体拘束その他の行動制限は本来あってはならないものであり、施設の存在意義は、いかに個別支援が行えるかにかかっている。ただ単に虐待防止・身体拘束適正化委員会を開催するだけでなく、今一度、障害者支援の原点に立ち帰り、利用者を一人の人として常に敬意を持って接することが出来ているかを謙虚に顧みながら、何故そのような支援を行うのかを利用者やご家族にきちんと説明できる支援に当たれる施設の実現を目指す。 (3)人材の確保育成    福祉サービスを提供するのは職員に他ならず、その資質が福祉サービスの質を決定づけることを踏まえ、人事評価制度も活用しつつ、人材の確保育成に努める。    人材の育成については、職員会議等に限らず、常日頃から職員間で自由闊達な意見を交わすことを通じて、また、内外の研修や講演に職員を参加させることで、より高度で専門的な知識・技術の習得を図るほか、生活支援員全員が社会福祉士・介護福祉士の資格を取得すること、強度行動障害の研修を受講することを目標に支援を行う。    人材の確保については、現状においても既に需給が逼迫しており、近い将来、福祉サービスに従事する人材の大幅な不足が見込まれることを踏まえ、一本化された福祉・介護職員等処遇改善加算なども活用して、働き甲斐のある就労環境を整備するとともに、職員の年齢構成や施設の経営状況にも配慮しながら、計画的な採用を進める。    なお、人事評価制度の充実を図るため、評価項目等を見直すとともに評価面談、部下職員による上司評価の導入を試行する。また、職員の負担軽減を図るため、介護分野が先行している介護支援機器の導入に向けた調査検討に着手する。 (4)開かれた施設運営、ホームページの充実  利用者の安全を確保するため、施設の立地条件を踏まえた避難訓練等の防災対策と合わせ、不審者の侵入防止といった防犯対策を講じるのは当然であるが、そのことによって施設が内向きとならないよう留意する必要がある。家族会の開催や実習生・ボランティアの受入れを継続し、地域に開かれた施設運営を心がける。また、移転に伴う施設運営の安定を確保する観点から、地元町内会や地域との良好な関係構築に務める。  また、ホームページを積極的に活用し、施設の活動情報をタイムリーに提供して、利用者家族やボランティアをはじめ広く地域に親しまれるとともに、福祉の心を持った人材の確保に資するよう、内容の充実を図る。 (5)全国大会の開催    全国盲重複障害者福祉施設研究大会が20年ぶりに本県で開催され、その主管施設となることから、大会が実り多いものとなるよう、主催者である全国盲重複福祉施設研究協議会と密接に連携し役割分担しながら、周到な準備を進める。 (6)安定経営の確保と旧施設の処分検討    国においては、長期的に厳しい財政状況が続き、障害福祉サービス費の伸びが抑制される一方、円安や東欧・中東での紛争等による需給関係の不均衡を受けて燃料費や光熱費、食材費などの騰勢がなお収まらない中、施設の建替えに必要な費用を賄うために行った多額の借入れを着実に返済していかなければならない。   このような状況を踏まえ、施設の安定的・継続的な運営を確保していくため、取得できる加算は取得することにより収入増を図りつつ、引き続き職員のコスト意識を高め、最少の費用で最大の効果を上げられる効率的な組織運営を徹底する。   原尾島の旧施設は現在まだ、書庫・倉庫としての利用を継続しているが、現在地への建替(新築)移転から3年が経過することもあり、経営資源の有効活用を図る観点から、現施設への集約を図るとともに、旧施設の土地建物の処分について検討を行う。 3:運営方針 (1)利用者の意思・人格の尊重  暴力・暴言や体罰などの虐待を絶対に行ってはならないのは勿論のこと、命令的・指示的言動に陥ることがないよう厳に戒め、利用者一人ひとりの意思・人格を尊重し、敬意をもって接する。  そのため、「職員倫理綱領」に基づく行動指針の遵守を徹底する。 (2)個別支援計画の着実な実施  利用者の意向や障害の特性その他の事情を踏まえた個別支援計画を作成し、これを定期的に、また、利用者の状況が変化した場合には随時に見直し、利用者が必要とする支援の提供に努める。 (3)穏やかで快適な日常生活の確保    担当職員が利用者一人ひとりとなじみの関係や信頼関係を構築し、利用者の思いに添った個別支援に努め、家庭的な雰囲気の中でゆったりと落ち着いて暮らせるよう、生活の質の向上を目指す。    また、買い物や外食・喫茶など、ゆとりの時間が充実したものになるよう創意工夫を重ねるとともに、手芸・カラオケなどのクラブ活動や様々なレクリエーションを通して、生活にメリハリと潤いを提供する。 (4)食生活と健康管理  利用者の食生活については、定期的な嗜好調査を行い、その結果を踏まえながら、個々の状態に配慮した健康的で美味しい食事の提供に努める。併せて、多職種共同で栄養ケア計画を作成し、これに基づいた栄養管理を行うことにより、利用者の健康状態の維持と食生活の向上を図る。  また、利用者が健康な生活を送れるよう、週3日以上の入浴や歯磨きの援助、衣類管理の徹底、寝具の定期的な交換など、快適で衛生的な環境を確保するとともに、うがい手洗いの励行や日々の健康チェックにより感染症予防を徹底し、疾病・異常の早期発見と適切な対応に努める。 (5)防災対策    火事や地震・土砂崩れ等に備え、万一災害が発生した場合にも利用者が危険を回避して身の安全を守り、迅速かつ整然とした避難行動が取れるよう、常日頃から繰り返し訓練を行う。    また、厨房など火気を取り扱う場所での消火確認、機械器具の整備点検を適正に行う。 (6)職員研修の充実    年間の研修計画に基づき、施設内研修を計画的に実施するとともに、専門的知識・技術の習得や資格取得に繋がる外部研修に職員を参加させ、人材の育成とサービスの向上を図る。    職位に応じた職責の理解を深めるため、管理者研修やリーダー研修にも引き続き注力する。 (7)家族会との連携の強化    利用者の健康状態や日々の暮らしぶりを知らせるなど、家族と密接な連絡を取り、良好な関係を維持する。特に病気やケガによる病院受診については、遅滞なく詳細な情報提供を行うよう留意する。    なお、成年後見制度の利用が必要な利用者については、関係機関と十分に連携して、後見申立の支援を進める。 (8)地域福祉への貢献    大学や専門学校からの実習生を積極的に受け入れて、障害者福祉への理解を深め、福祉人材の育成に努める。また、施設の利用希望者や家族、盲学校・支援学校の教員、相談支援事業所の職員等の施設見学を積極的に受け入れ、地域の理解と協力が得られるよう努める。 (9)利用者・家族からの苦情や意見・要望への対応    利用者や家族の苦情や要望をはじめ、実習生等の意見も真摯に受け止め、迅速で誠意ある対応に努めて、サービスの質の向上に繋げる。  苦情については、苦情解決規程に基づき、苦情受付担当者と苦情解決責任者が連携して適切に対応し、速やかな解決に努める。  また、寮長による利用者ヒアリングを年2回実施するとともに、第3者委員によるヒアリングも設定し、利用者の声を第3者委員が直接聴取する。 (10)その他   @明るく風通しの良い職場づくり     職員が自由闊達に意見を述べられる職員会議や日々の朝礼を通じて、相互のコミュニケーションを円滑化し、すべての職員が働き甲斐を持ち安心して仕事を続けられるような、明るく風通しの良い職場づくりを進める。   A修繕積立金の計画的な積み立て     新たな施設においては、深い軒の出や給排水設備の点検用ピット造設など長寿命化を考慮しているものの、真に長寿命を確実なものとするためには、10年単位での定期的な大規模修繕が欠かせないことから、収支状況を見定めながら可能な限り計画的な修繕積立金の積み立てを行っていく。ここまで