法人本部 お知らせ

令和元年度文芸作品入賞作品のご紹介

令和元年度 岡山県視覚障害者協会主催文芸作品コンクールの結果報告

今年度も多くの方からたくさんの応募があり、関係者としてうれしく思うと同時に、ご協力くださった皆さんに心から感謝いたしております。

今回は川柳に14名から39句、俳句に9名から24句、短歌に6名から18首が寄せられました。  

その中から入選された作品をご紹介します。  川柳の場合は作品が多いこともあり、今年度は佳作も3句選んでいただきました。  

来年度も今年と同じように行いますので、皆さんふるってご応募ください。お待ちしています。

 

☆☆ 文芸作品審査結果および講評 ☆☆  

◇川柳の部  選者 従野 健一(よりの けんいち)先生

「天」 川田 弘美(かわだ ひろみ)さん

 手話の子が心で唄う赤トンボ (しゅわの こが こころで うたう あかとんぼ)

評:自分は耳が不自由で音が聞こえにくい。  

 でも、帰り道ふと見れば夕焼けが西の空にきれいに出、赤トンボが数匹飛んでいる。

 その情景に赤トンボの唄を思わず口ずさむのです。

 小さい頃母から教わったのを思い出し、今頃どうしているかな、と心を寄せるのです。

 心の奥に鳴り響くようなうまい表現です。

「地」 久保 瞳(くぼ ひとみ)さん 見えますか元気ですよと亡き母に (みえますか げんきですよと なき ははに)

評:上五の、「見えますか」と優しく問いかける作者の心情、優しさがよく出ています。

 しかも、この世にはいない亡き母に、元気な姿を伝えようと心の中で叫んでいるのです。

 生前は仲の良かった親子であったと思われ、うまい表現で心を引きつける傑作です。

「人」 高谷 将美(たかや まさみ)さん 虹の橋渡れば妻に会えるかも (にじの はし わたれば つまに あえるかも)

評:妻に会いたくても会うことができない、ふと見れば橋にきれいな虹が出ており、

 あまりにきれいだったので思わずこの虹に賭けてみようと、とっさに思ったそのままに表現された妻への思いが伝わってくるようです。

「佳作」 竹内 昌彦(たけうち まさひこ)さん 0点を付けて教師は眠られず (0てんを つけて きょうしは ねむられず)

評:0点は付けたくないのは心情ですが、現実である以上教師としてはやむをえないのです。

 中には真面目に取りくんでいるのにと、教師も悩むのです。  厳しい現実に、立ち向かう様子がよく出た句です。

「佳作」 森 洋子(もり ひろこ)さん 竹トンボどこへ飛んだの声出して (たけとんぼ どこへ とんだの こえ だして)

評:竹トンボはよく飛んで面白いのですが、飛び過ぎるとどこへ飛んだかわからなくなり捜すのが大変。

 ときには、声を出して、と思わず叫びたくなるのです。

「佳作」 中村 恒子(なかむら つねこ)さん 夕風がほのかに温い春の音 (ゆうかぜが ほのかに ぬくい はるの おと)

評:夕暮の風はなんとなく物悲しいもの、今日一日のでき事を思い出しながら、でも春らしい温かい風にほんのりとした気持ちが出てる句です。

  今年初めて選をさせていただきました。 まず思ったのは、皆さん大変お上手なのに感激しました。 選ばれたこの三句は、選者の心に深く飛び込んでくるような句でした。 今後も皆様とのおつきあいを楽しみに、来年も投句よろしくお願いいたします。  

◇俳句の部  選者 土師 康生(はじ やすお)先生 「天」 小林 政利(こばやし まさとし)さん 原爆忌父の部隊は呉にあり (げんばくき ちちの ぶたいは くれに あり)

評:俳句の面白さは敢えて言わない点にあります。

 この句でも敢えて父のことには触れず、所属した部隊が呉にあったことのみを告げる。

 そのあとに残る余韻の中で、読者は想像をしてこの句を鑑賞する。

 そこで「原爆忌」という季語が、非情な重みをもって胸に迫ります。

「地」 武藤 孝夫(むとう たかお)さん 軽やかに点筆弾む窓の秋 (かろやかに てんぴつ はずむ まどの あき)

評:点筆を持って、室内の机に向かって作業をしている作者。

 ふと目を窓に転ずれば、室内では感じられなかった秋の訪れが色濃く感じられる。

 そんな情景が目に浮かぶ作品です。  まるでリズミカルに音をたてる点筆の音が聞こえてくるようです。

「人」 小原 伸一郎(こはら しんいちろう)さん 行き慣れぬ出先の出会い梅ふふむ (ゆきなれぬ でさきの であい うめ ふふむ)

評:俳句では、季語の動かない句がよいとされます。  ほかの季語ではいけない、この季語だからこそ句が生きる。

 季語が動かないとはそういう意味です。  この句では「梅ふふむ」という季語がいかにも合っている。

 訪れることの少ない場所での偶然の出会い。  そこから何かが始まる予感が「梅ふふむ」で、うまく表現されています。

 ◇短歌の部  選者 土師 康生 先生

「天」 武藤 孝夫 さん 武骨なるわが指先がぼんやりと明るむごとく点字読み込む (ぶこつなる わが ゆびさきが ぼんやりと あかるむごとく てんじ よみこむ)

評:まだ点字を始めたばかりの作者のようです。

 指先でわかるようになった点字から、明るさを感じる。  それは温もりであったかもしれません。

 少しずつ理解できるようになった点字は、作者の心の中に、明るく温かい何かを与えてくれたのでしょう。

「地」 竹内 昌彦 さん 目の見える友の遊びについて行けず一人帰った小田川の土手 (めの みえる ともの あそびに ついて いけず ひとり かえった おだがわの どて)

評:頭で作った観念的な作よりも、体験に基づいた具体的な作の方がやはり心に迫り、共感性は高いと言えます。

 作者は幼き日の遠い記憶を忘れることができません。  それだけ悲しいことだったのでしょう。  

 そしてそのような記憶は、晴眼者である私の心の中にも消えることなくあるのです。

「人」 松下 陽子(まつした ようこ)さん 極小の蟻れつれつれつの行き先に黒い塊怪物となる (ごくしょうの あり れつれつれつの ゆきさきに くろいかたまり かいぶつとなる)

評:この歌は、日常のなかのありのままの発見を素直に歌にした、「写生」の歌として面白いと感じました。

 獲物に向かって蟻はその体の大きさを考えれば、遥かともいえる行進を続けます。

 それを「れつれつれつ」と表現したのも面白い点です。  やがて獲物にまとわりついた蟻は集団となって、黒い塊をつくる。

 結句はすんなり出てきたのでしょうか。  それともだいぶ考えて「怪物」としたのでしょうか。